森光子へ 50年やさしくして頂きました

特別企画 弔辞 鮮やかな人生に鮮やかな言葉

黒柳 徹子 女優・ユニセフ親善大使
エンタメ 芸能

 もり みつこ 享年九十二。『時間ですよ』を始めとしたドラマ、『放浪記』などの舞台で活躍した名女優。平成二十四年十一月十日、心不全のため死去。黒柳徹子(くろやなぎてつこ)とは五十年を超える親友だった。

黒柳徹子氏と森光子氏 ©文藝春秋

 森光子様 五十年くらいの間、やさしくして頂きました。

 ナマ放送の中、切りぬけて来ましたね。その頃の森さんは、コピー機といわれるくらいセリフ憶えの早いかたでした。NHKの専属だった私がフリーになるので、マネージャーを探していたとき御自分のマネージャーの吉田なおみさんを紹介して下さったのも森さんでした。長いこと同じ事務所でした。舞台でも、どのくらい、お世話になったか、わかりません。

 森さんは本当にユーモアのある方でした。五十年近く前、芸術座で「縮図」という徳田秋声の芝居を御一緒しました。菊田先生の脚色でした。私も森さんも東北の芸者でした。

 ある日、出る前に、森さんの部屋で、私が「アメリカのイサドラダンカンというダンサーは、首に長いスカーフを巻いてオープンカーに乗ってたら、スカーフが車輪に巻きこまれて死んだそうです」といって、森さんは「可哀そうね」といって、本番になりました。

 雪の河原で、お金持の坊っちゃんに捨てられた森さんが、うずくまって泣いていて、私が助け起こすシーンでした。私が冗談めかして「なんで、こんなとこさ寝てんだい」といって抱き起こすのです。私が抱きましたら森さんが小さい声で「イサドラダンカン/\」とおっしゃいました。気がついたら、私は森さんが首に巻いてる薄いスカーフを下駄で踏んで持ち上げたので、森さんの首がしまってたんです。その瞬間的なユーモアに、私は自分が悪いのに、感動していました。あなたは、そういう方でした。

 私がニューヨークに一年くらい留学と称して、休養に行ったとき、ある日森さんからお手紙が来ました。体に似合わない、大きな字で、「おこづかい困っていませんか。いつでもいってね」。私は泣きました。

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source : 文藝春秋 2014年12月号

genre : エンタメ 芸能