中島みゆき 心の痛みがわかるレーダー

101人の輝ける日本人

瀬尾 一三 音楽プロデューサー
エンタメ 芸能 音楽

1975年のデビュー以来、数々の名曲を世に送りだしてきた中島みゆき(70)。彼女のCD、コンサート、音楽舞台「夜会」「夜会工場」等のプロデュースを務める瀬尾一三氏が、その音楽の魅力を語る。

中島みゆき ©ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス

「仕事を一緒にしないか」と打診があったのが1988年です。「気難しい」という噂を耳にしていましたが、実際に会うとそんなことはありませんでした。じつに思慮深くて、相手に対して言葉を尽くそうとする。その思いの通じない人が「難しい」と言っていただけなのです。

 一緒に仕事をするにあたり、僕は中島さんの歌が、長く歌い継がれるスタンダードになることを目指そうと思いました。詞とメロディを作るのが中島さん。歌を作るのはゼロから一を生みだす作業。七転八倒して作っているのだと思いますが、そこは僕が立ち入ってはいけない領域なので、曲作りの秘訣は分かりません。ただ最初に作品を聴くときは、組んで30年以上になった今でも興奮を覚えることがよくあります。

 その曲の世界にあわせて音をアレンジするのが僕の仕事。以前は事前に曲の方向性を話し合ったこともありましたが、常に私の想像の上をいく曲が届くので、何も言わないようになりました。

 中島さんはデビュー曲「アザミ嬢のララバイ」のような男女の身近な恋模様から、同じ年に出した「時代」のように大きな世界までを表現できる。ミクロとマクロの両方を曲にできる人は多くはありません。

瀬尾一三 ©ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス

 彼女は生き方をまげず、自分に正直に曲を作っています。20代でしか作れない曲、30代で歌いたい曲と、年代ごとに自身の表現したいことを誠実に歌ってきた。背伸びしたり、若作りしたりしていない。だから、中島さんが20代で作った曲をいまの20代が聴いて感動する。彼女の曲に世代を超えて響く力があるのは、そのためです。

 彼女はあらゆる人々へ向けて歌っていますが、世の片隅で生きている人たちにもその歌が届くのは、多くの人の心の痛みがわかるレーダーを持っているからだと思います。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

12,000円一括払い・1年更新

1,000円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
雑誌プランについて詳しく見る

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2023年1月号

genre : エンタメ 芸能 音楽