どんな時代も、政治にはバランスと緊張感が必要だ。
そのためには拮抗する二つの政治勢力の存在が前提となるが、これが欠けたとき、独裁政治がはじまる。日本の政治は、その瀬戸際にいる。
というのも自民党が30〜40%の支持率を保つ一方、立憲民主党は日本維新の会と5〜6%という水準で競いあっている。これでは内閣支持率が下がっても、政権交代の選択肢に野党が入ってこない。
2021年10月の衆院選で議席を減らした責任を取って辞任した枝野幸男氏の後任として、党が代表として選んだのが泉健太氏だ。当初、泉代表は女性6人を執行役員に起用して清新さをアピールしたが、参院選でやはり議席を減らし、今度は、幹事長に岡田克也氏、国対委員長に安住淳氏を起用した。民主党政権時代に中枢をになったベテランにスイッチしたのだ。だが国民には、「選挙を総括して、なぜこうした顔ぶれになったのか」と映っている。
選挙後、立民は共産党との協力を解消する一方、これまで「自民党の補完勢力」と批判してきた維新とは協力に転じた。これは国会運営上のことなのか、ともに政権を取るつもりかはっきりしないし、もとは仲間で第一の協力相手のはずの国民民主党とは連携がとれていない。これも何をしたいのか、わからない。
そんな状態で再び失敗を繰り返せばどうなるか。10年経っても政権奪取など見えてこないばかりか、野党第一党の座からずるずると転落し、やがて消えてなくなってしまう。
一番の弱点は、代表や幹事長、国対委員長など中枢幹部が一緒にやっているようでいて、どうも政策で結束しているように見えないことだ。
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source : 文藝春秋 2023年2月号