岸田文雄内閣総理大臣が掲げる「新しい資本主義」では、長期的に企業価値を最大化する鍵を「人」、すなわち人的資本に置くことが挙げられており、「モノからヒトへ」を実現するべく、政策の推進、仕組みづくりの推進への期待が高まっている。
人材を「資本」と捉える経営、いわゆる「人的資本経営」への注目が集まる中、2022年5月には、「人材版伊藤レポート2.0」が公表され、人的資本経営を実践に移していくための取組みやその重要性、仕組み化の工夫など、具体化が進んでいる。
また、コーポレートガバナンス・コードにて「非財務情報の可視化」に関する言及や、機関投資家との対話を目的に統合報告書等で「人材戦略」を説明することは企業価値向上に不可欠となっており、経営をはじめ人事部門、財務部門、事業部門が一丸となって、「人」を軸とした成長戦略を描いていくことが求められている。
そこで本カンファレンスでは、「人」への投資の可視化と価値創造の実践知をテーマに、「人的資本経営」を様々なステークホルダーの視点から考察する。さらには、実践に向けた仕組みづくり、KPIマネジメント、デジタルツールの活用など、多様な視点から検証を行う。
■基調講演
人的資本経営による日本企業の変革
~投資家が注目する人的資本情報の開示と人材が活きるマネジメント~
伊藤氏からの“要諦紹介”的、冒頭のメッセージは以下。
・かつて機能したメンバーシップ型雇用の、意図せざる限界の直視を
・“価値”を基軸にした人的資本経営を
・“Efficient”思考から“Effective”思考へ、一律一斉思考との決別を
・人的資本への投資の本格展開と可視化を
・3P(perspective)/5F(factor)モデルの実践段階へ
・経営戦略と人材戦略の同期化を目指したスキルの可視化と戦略的リスキリングを
・社員個々人の市場価値を高める施策を
・無形資産たる企業文化の再構築を。企業文化に対する楽観を戒める
・選び、選ばれる関係づくりを
・健康経営とWell-being経営を
・秩序(管理)重視の人事から、パーパス志向の、そして人的資本の潜在力を「全機現※」する創発的な人事へ ※ひとりひとりの価値を全て解放して高めること
上記に沿って各論を展開した。
人材は管理の対象となる「人的資源」ではなく「人的資本」である。各人材の潜在力を見出し、それが花開くための「触媒」を会社(や上司)が提供することが必要。人的資本の「価値」は以下の2つで決まる。①現在または将来の経営戦略の遂行寄与度 ②将来の新たなビジネスモデルを創造する構想力。
“Efficient(効率)”思考は「一律一斉志向」を誘発するため、“Effective効果思考”に変えるべき。社員個々人の個性や(潜在)能力、専門性、さらには置かれた環境に照らして、人的資本価値の創造に会社が配慮する。日本を変革する道は人的資本経営の徹底実践!
『人材版伊藤レポート』を熟読してほしい。3つのPerspective(視点)は以下。
①経営戦略と人材戦力は連動しているか ②目指すべきビジネスモデルや経営戦略と現時点での人材や人材戦略との間のギャップを把握(見える化)できているか ③人材戦略が実行されるプロセスの中で、組織や個人の行動変容を促すような企業文化が定着しているか
5つのCommon Factors(共通要素)は、以下。
①目指すべきビジネスモデルや経営戦略の実現に向けて、それに最適な多様な人材が活躍する人材ポートフォリオを柔軟に構築できているか(動的な人材ポートフォリオ) ②個々人の多様性が、対話やイノベーション、事業のアウトカムにつながる環境にあるのか(知・経験のダイバーシティ&インクルージョン) ③目指すべき将来のビジネスモデルや経営戦略と現在の人材のスキルや専門性との間のスキルギャップを埋めているか(リスキル・学び直し) ④多様な個人が仕事に主体的、意欲的に取り組めているか(従業員エンゲージメント) ⑤時間や場所にとらわれない働き方を会社が提供しているか(柔軟な働き方)
人材戦略と経営戦略がなぜ連動できていないのか、を解説。「人材戦略」とは何か、企業変革のための課題・アクション、について触れた。
腰を据えた人的資本の情報開示を、と提言。人的資本投資とその可視化の相乗作用を、2種類の人的資本情報、人的資本投資の範囲とは、を解説。
何をどのように開示したらいいのか~投資家を意識して~、を詳説。人的資本情報の開示の現状は? 投資家の基本的関心事項、投資家が統合報告所・対話に求めること=経営戦略(現在及び将来)を遂行するため、人材戦略とどれくらいマッチングしているか?/経営人材の探索・育成やサクセションプランは?/社員の多様性(属性・知・経験の多様性)をいかに高めているか?/社員のエンゲージメントはどうか?/どのような企業文化を醸成しようとしているか?/社員の働き方改革は/経営会議や取締役会での人事・人材戦略をめぐる議論は?/人的資本に関わる、いかなるKPIを役員報酬にどのように反映しているか? に言及した。
最後に日本初の人的資本経営~“モデル3.0”で企業変革を、と提唱。
「人的資本」をど真ん中に置いたWell-being経営=モデル3.0だ。「ジョブ」で人材を使い捨てにしない。そのジョブが会社に適合しなくなったら「ハイさよなら」ではなく、リスキルの機会を積極的に提供し、「人的資本価値」の自律的向上を促進。
人材を短期的に入れ替え可能な「資源」と見るのではなく、その人材の中長期的な成長を支援し、それが会社の成長につながる「循環型」経営を。個人と会社の相互成長を実現する。個人版の「両利きのスキル形成」を。個人の中での知の入れ替えが可能。日本人の高い組織ロイヤリティや誠実性を活かす。社員のWell-beingの向上を目指す──。モデル3.0を皆さんと一緒に作り上げていきたい、と締めくくった。
■課題解決講演①
人的資本経営による長期的ブランド価値の創出プロセスとは
SDGs、サステナビリティ、理念浸透、従業員エンゲージメント向上を専門とする経営と現場の一体感ある組織づくりのエグゼクティブプランニングディレクター。『SDGs Biz』公式YouTuberとして企業のSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)についての研究も行う。
◎人的資本経営とコーポレートブランドの関係
2020年代のコーポレート・ブランディングは「サステナビリティ」がキーワードになっている。社会課題(SDGs)との接続が重要だ。地球が限界を迎え、株主のためから“地球のため”に企業の存在意義が変わり、ESGのうちのE=環境関連の情報開示に注目が集まるようになり、未曾有の「長期ビジョン・パーパス」ブームが到来した。
しかし今や、長期ビジョン・目標を掲げるだけでは差別化にならなくなってきた。現在は「既存事業の延長以上の成長ができそうか」が問われている。重要とされる人的資本経営の中でも、とくに「組織文化(Workplace Culture)」の優先度が高いと言われている。企業はイノベーションを起こさなくてはならない。長期ビジョンやパーパスの実現に向かって挑戦し続ける組織文化がコーポレートブランドにとっても非常に重要な要素だ。
◎人的資本経営の導入プロセスと各過程のポイント
現状調査・定量化(AS IS)⇒組織・人のありたい姿(TO BE)⇒優先項目KPI・予算配分(ALLOCATION)⇒施策実施(PLAN・DO)⇒効果検証(SEE)という流れが基本。
「人」に関連する情報について、国内外の様々な開示(義務)事項が設定されている。それらを踏まえて組織・人の在り姿を考え、例えばISO30414の情報開示項目を確認し開示する。30414にも組織文化=エンゲージメント/満足度/コミットメント/定着率という項目は入っている。また、他社動向やトレンドにとらわれないKPI設定が重要。CEOやCHROは、社員や投資家が自社の企業価値向上のストーリーをより深く理解できるような自社固有のKPIを設定すべきだ。
予算配分にあたっては、採用予算や教育予算に加えて、価値を生み出す人材に投資する「定着予算Ⓡ」も確保したい。内部施策では、仕組みにすることで日常化する(Functional)なものと、心に訴えかける(Emotional)なものを組み合わせると高い効果を発揮する。イノベーター理論によると、上位16%にアプローチすることで高い普及率が得られるという。組織内においてその上位層=イノベーターとアーリーアダプターが誰なのかを見きわめターゲット設定し、施策実施と組織改革を行い、スピーディに効果検証したい。
◎まとめ
①人的資本経営はコーポレートブランドにとって「長期ビジョン・パーパス」実現の手段
②「挑戦し続ける組織文化」があるかどうかが期待・信頼を獲得する上で極めて重要
③人的資本経営導入の5つのプロセス。プロセスは簡単だがやるのは簡単ではない
④従来の採用・教育にフォーカスするだけでなく価値を生み出す人材の「定着」にも予算を配分する
⑤大事なのは計測ツールではなく「組織・人のありたい姿」に近づいているかどうか
■特別講演①
住友商事の人材マネジメントに関する取り組み
1984年住友商事入社。北京住友商事社長、関西ブロック統括部長、人事厚生部長、アジア大洋州コーポレートユニット長、タイ住友商事社長を経て、2018年執行役員就任。2020年4月より現職。
住友商事は1919年設立。社員数は連結ベースで7万4253人、単体で5150人。5150人のうち海外駐在が1000人、事業会社出向が1200人を数える。連結純損益の推移やマーケットからの評価をふまえ、中期経営計画「SHIFT2023」では、事業ポートフォリオのシフト(高い収益性と下方耐性の強いポートフォリオへ)、仕組みのシフト(実行性の担保)、経営基盤のシフト(人材マネジメントの強化など)を打ち出し、取り組んでいる。
人材マネジメント改革はすなわち旧来型パラダイムからのシフト。「グローバル人材マネジメントポリシー」を2020年9月に制定し、21年4月に新人事制度を導入した。職務等級制度の導入(管理職は年次管理を撤廃)により、若手からシニアまで全世代の活性化による組織パフォーマンスの最大化を図り、評価制度の改革によりFairなPay for Performance、人材育成に資する評価制度へと変えた。
グローバル人材マネジメントポリシーで掲げる“目指す個の姿”は「Top Tier Professionalism」。グループの理念やビジョンに共感し高い志を持ち、自律的な成長を続け、進取の精神でグローバルフィールドで新たな価値創造に挑戦する人材。“目指す組織の姿”は「Great Place to Work」。個々人がイキイキと新たな価値観を生み出し続けるGreat Place to Workをグローバルに築き上げ、世界に人材を輩出する「挑戦の場」として選ばれ続ける組織だ。
人材マネジメントのあり方は、Diversity & Inclusion/グローバル適材適所/個の自律的成長(自律的なキャリア形成)/パフォーマンスに応じたフェアな処遇/ピープルマネジメント力の強化、である。すでに今中期経営計画から取り組みが始まっている。
ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)は、価値創造、イノベーション、競争力の源泉そのもの。グローバル人材マネジメントポリシーで目指す姿の実現に向けて、不可欠だ。若手・女性活躍推進や、シニア社員向けの諸施策を実行している。例えば、女性活躍推進は、「日本におけるD&Iの最重要課題」と位置づけ、女性取締役・監査役30%以上、女性管理職20%以上、などと目標値を設定し、PDCAを確立して各種施策を実行している。
人材マネジメント改革への挑戦にあたって今後は、各施策の更なる浸透、運用の徹底=実効性あるPDCA/徹底的な対話/変化の見える化/やりぬく覚悟、が必要だ。それにより、エンゲージメント向上(エンゲージメントサーベイ定点観測、ピープルマネジメント力の強化など)/働き方改革(リアルとリモートのベストミックス追究、熱量・創造を生む職場づくり)/人的資本経営と開示(人材マネジメント可視化の潮流を社内変革の追い風に)、を実現させていく。
人的資本をより良くしていくことは“経営と人事部門が、理念とビジョンを掲げて社内をリードし、戦略を共有し、役職員全員で地道にやりぬくこと”でしか実現できない。この連鎖を起こすための鍵は、上司と部下がしっかりと向き合い、丁寧にコミュニケーションをすることであり、それを促す環境の整備であると考える。時間はかかるかもしれないが着実にそれらを積み重ねることで、社員が改革による変化を感じることができれば改革のうねりは大きくなる。
■課題解決講演②
従業員のエンゲージメントを高め、成長意欲を引き出す
“人財トランスフォーメーション”とは?
~意識改革・制度改革・仕組みづくりのトライアングル~
大学院卒業後、デロイトトーマツコンサルティング(現:アビームコンサルティング)にて経営コンサルティングに従事。2015年から経営改革部門の責任者を務める。2021年、日本企業のビジネス改革(BX)とデジタル改革(DX)を実現させたい想いからB&DX株式会社を設立。現在はDX(デジタル改革)、新規事業開発、働き方改革、人材開発、パーパス経営、ESG/SDGsなど日本企業の様々な経営課題に対してコンサルティングを行っている。また、DXの第一人者として多数のメディアや講演に登壇・執筆するなど幅広く活躍している。
◎人的資本に関する動向と、従業員エンゲージメントの実態
政府は2022年8月に人的資本情報可視化の指針を公表。企業は経営戦略に合わせて開示項目を選び、価値向上に資することが求められる。しかし、単に人的資本情報を開示することだけが重要視されると、人的資本に投資する活動を評価してもらう本来の目的から外れ、数字を同業他社よりも良く見せることが目的になる恐れがある。これは避けたい。
人材育成の一環で、業務に役立つスキルや知識を学び直させるリスキリングが盛んになっている。特にデジタル人材の育成を目的としたリスキリングが多く見られる。また、従来の「メンバーシップ型」とは異なる「ジョブ型」雇用が注目され、2021年時点で57.6%の企業がその導入を検討または導入済みというデータがある。
日本企業の社員エンゲージメントが世界最低水準なのは、よく知られた不都合な真実。直近も改善はしていない。現在の勤務先で働き続けたい人の割合は、APEC(アジア太平洋経済協力)諸国の中で日本が最下位である。また、勤続意向が低いにもかかわらず、転職意向や独立・企業志向も最下位だ。社外学習や自己啓発も行っておらず、不実施の割合はAPEC諸国中で突出して多い。
つまり、日本企業は変革人材の確保が喫緊の経営課題として挙げられておりながら、社員エンゲージメントが極めて低く、新しいことへの挑戦意欲・変革意欲も大きくそがれている深刻な状態だ。この10年で、働きやすさは高まったものの、働きがいは急激に低下しており、変革人材の確保、熱意をもって自ら動く、挑戦する風土にはつながっていない。
社員の満足度を上げることと、エンゲージメントを上げることは本質的に異なる。満足度向上の本質は現状肯定度の向上なので、満足度向上策のみ先行すると、エンゲージメントはむしろ低下する。
◎あるべき人材マネジメント
あるべき人材像と現状の人材のギャップを埋めることをゴールに定めて人材マネジメントに取り組むことで、人材に関わるあらゆる問題の真の解決につながる。日本企業は、企業理念や経営戦略の明確化が進んできている一方で、理念や戦略に沿ったあるべき人材像の定義が進んでいない。また、パーパスや経営戦略と人事制度(縦軸)が連動していない。個別に足元の課題に取り組んできたため、それぞれの人事制度(横軸)も連動していない。これらを「連動させる」ことが非常に重要である。
人材トランスフォーメーション(X)を実現させるためには、「意識の改革=心」「人事制度の改革=技」「行動を変える仕組み作り=体」、“心技体”のトライアングルが必要だ。例えば「心」では、自社のパーパスや戦略についてトップから積極的にメッセージを発信することで、従業員がパーパスや戦略を自分事として認識し、行動意欲が生まれる。
また、「体」では、自発的な行動を待つだけでなく、実際に従業員に行動させる働きかけを行うことで、取り組みが日常化し、企業文化として定着させることができる。
まとめると以下の三点につきる。
① 自社のパーパス・経営戦略・あるべき人材像と結びつけ、各制度が連動した人事制度に改革せよ
② 人材Xを実現するためには、「人事制度の改革」だけでなく、「意識の改革」と「仕組み作り」を同時に行うことが重要
③ 日本は世界で最も人材Xの効果が見込める国である。いまこそ改革に着手すべし
課題解決講演③
人への投資効果を最大化する 「自律型人材の育成」
早稲田大学卒業後、リクルート、外資系金融会社、教育研修会社設立を経てレアリゼ設立、代表取締役就任。NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会設立。理事長就任。2021年、アゴラ・サーバントリーダーシップ・ビジネススクール(ASBS)を開校、代表就任。日本を代表する大手企業、医療機関、NPO、地方など様々な分野でのリーダーシップ教育を通じて、この国が再び活力ある状態になるよう活動している。
日本では、企業は人に投資せず、個人も学ばない。社外学習・自己啓発も、自分自身で自律的にキャリアや人生を考えていないと取り組まないし、社外学習・自己啓発研修は強制的に受けさせても身につかない。「知・経験のD&I」やリスキリングも、やらされ感では身につかず、依存型では従業員エンゲージメントも高まらない。とにかく、自律的な取り組みが必須なのだ。
「自律」=自らの意志を持って自ら行動を選択すること、は新入社員から上級管理職、役員まで全社的な問題だ。自律型人材の育成こそが、人への投資効果を最大化する。人はメリットのあることを行い、デメリットのあることを避ける。「欲求」を満たしたいので、楽しかったり充実感のあるほうを選ぶ。人は「合理的」な理屈ではなく「欲求充足」の原理で行動する。
仕事で自律的に行動できないのは、仕事での欲求充足ができない、あるいはイメージできないからだ。人は、欲求(インナードライブ)を満たす自分のイメージ「Wantsイメージ」を手に入れるように自動的に行動する。悪い自律=わがまま、他人から強制される他律でなく“良い自律”になるには、どうするか?
人は、「食べ物」と「情報」で出来ている。常日頃接している情報がWantsイメージに入り易い。質の高いイメージを描くには、より上質な情報や人材に多く触れることが欠かせない。また、「自分の行動は全て自分自身が選んだことだ」と受け入れること、これが精神の健康の基本だ。例えば自分を客観視して「不幸な選択を(自ら)している」と気づけば、より良い選択をしようとする。
自分は仕事によって誰を幸せにしたいのか、を考え、自分の意志を持って自らコトを起こし周囲に影響を与える人=リーダーを組織の中に増やすべき。そして人的投資を行って全ての人をリーダーにして強い組織を創ることが大切。階層を超えて、全ての組織人にリーダーシップが必要、組織の中には一貫したリーダーシップ体系が必要だ。
■特別講演②
T&D保険グループの人的資本経営
~「Try & Discover 2025」実現に向けた人材育成~
1987年、太陽生命入社。2014年、執行役員。18年T&Dホールディングス常務執行役員。2020年、太陽生命取締役専務執行役員、T&Dホールディングス専務執行役員。現在に至る。
T&Dホールディングスは、太陽生命、大同生命、T&Dフィナンシャル生命という市場特化戦略を追求する国内生命保険事業をコアに、生保事業と親和性の高いクローズドブック事業、アセットマネジメント事業、ペット保険事業等でグループストラクチャーを構成。生命保険3社は「市場×チャネル×商品」が三位一体となった独自のビジネスモデルを持ち、それぞれの特化市場で引き続きトップブランドの構築を目指す。
人材戦略の全体像は以下。グループ長期ビジョン※を達成するための人材戦略を、グループ成長戦略と関連付け、グループ各社の企画部門・人事部門と連携して策定・実施。特にグループ全体での取り組み──①専門人材の確保 ②人材の育成・リスキリング ③DX人材の育成 ④グループ内の人材流動化 ⑤働きがいのある職場環境の構築──を行っている。
※コアビジネスの強化/事業ポートフォリオの多様化・最適化/ERMの高度化/グループ一体経営の推進/SDGs経営と価値創造
まず①では、事業ポートフォリオの多様化・最適化に向けて既存ビジネスの領域を超えた事業を展開、生命保険事業とは異なる領域で必要な高度専門人材の確保ルートを多様化している。②では、グループ各社が従業員の育成計画を策定、必要な知識・スキル・能力を社内に開示。最新の知識・スキルを学ぶオンライン教材や海外・ビジネススクール派遣等、従業員が自律的に学ぶ教育機会を提供している。
③では、新たなお客さま価値の創出や、業務の生産性向上等に向け、DXへの感度を高め、新たな価値を創出できる人材を育成。④では、不確実性の高い経営環境に対応していくため、グループ経営資源を最大限活用。グループ各社の人材がグループの成長を考え、新たなシナジー効果を追求するためにグループ内の人材流動化を加速。グループ人材交流、グループ内公募、グループ協働研修、グループ内IR活動、グループ経営人材の育成、健康経営の推進、シニア層の活躍推進、女性の活躍推進、人権尊重の取組みなども行っている。
⑤働き方の多様化においては、従業員が育児や介護などの家庭の責任を果たしながら十分に能力を発揮できるよう育児休業などの制度を充実させるとともに、業務改善等により、総労働時間を縮減。多様な働き方を可能とするための在宅勤務制度やサテライトオフィス勤務制度の導入などを実施している。ちなみに男性の育休取得率は4年連続100%であり、今後は育休取得日数を増やしていきたい。
また、従業員満足度を「グループの企業価値向上に向け、従業員が会社への貢献意欲や愛着を持ち、会社の一員であることの誇りや責任、成長を感じて自発的に業務に取り組んでいる状況」を示すものと定義。毎年、従業員満足度を調査するとともに、グループ長期ビジョンの実現に向けた非財務KPIとしても設定している。「人材の育成」「全ての人が活躍できる場作り」を推進することで人的資本を向上し、グループ長期ビジョンの実現を通じて、経営理念である人と社会に貢献していく。
2022年11月1日(火) オンラインにて開催・配信
source : 文藝春秋 メディア事業局