サイエンスライターの佐藤健太郎氏が世の中に存在する様々な「数字」のヒミツを分析します
単位の接頭語として、センチやミリなどはおなじみだろう。大きい方には、10の3乗(1000倍)がキロ、10の6乗がメガ、さらにギガ、テラ……と、3桁刻みで10の24乗までが設定されている。また小さい方にも、10のマイナス3乗(1000分の1)がミリ、その下がマイクロ、ナノ……などの接頭語があり、こちらも10のマイナス24乗までが取り決められている。
そしてこのほど、31年ぶりに新たな接頭語が登場することとなった。10のマイナス30乗がクエクト(記号q)、マイナス27乗がロント(記号r)、27乗がロナ(記号R)、30乗がクエタ(記号Q)と決定したという。なぜQとRで始まる名前になったかというと、他のアルファベットはほとんど単位名や接頭語の記号として使われており、これらと重ならない文字が残っていなかったためらしい。
数詞でいえば、10の27乗は「千𥝱」、10の30乗は「百穣」となる。𥝱は万・億・兆・京・垓の上で1兆の1兆倍、穣はそのさらに1万倍に相当する数だから、さすがになじみがない。にもかかわらず今回新たな接頭語が定められたのは、情報科学などの進展により、近い将来にこれらの巨大数を扱う機会が見込まれるからだという。
我々の身近で、このレベルの数を見ることはあるのだろうか。たとえば世界の海水の量ですら、10の21乗リットル程度に過ぎない。地球全体の質量だと約6ロナグラム、太陽の質量は2000クエタグラムと、ようやく新接頭語の出番となる。
一方、体重70キログラムの人体を構成する原子の数は、約7ロナ個に相当する。また世界に存在する微生物の数は、約50ロナ個とする推定がある。ちょっと信じられない数字だが、実は1グラムの土には世界の総人口に匹敵する数の細菌が棲んでいる。我々は、目に見えない微生物の海に浸って生きているのだ。
小さい方はどうだろうか。トランプを4人のプレイヤーに配った時、全員に同じスートのカード13枚ずつが偶然に揃う確率が約2000𥝱分の1、すなわち約447クエクトになるそうだ。これは宇宙開闢から138億年の間、全人類が毎秒1回ずつ試しても1度現れるかどうかの低確率だが、笑ってしまうことにこの100年で10度ほど記録されているらしい。偶然の力は恐ろしい、ということにしておこう。
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source : 文藝春秋 2023年3月号