ゴッホを世に出した義妹の記録
ルソー、ピカソ、モネなど、主に西洋近代美術史に名を残したアーティストたちにまつわる「史実をベースにしたフィクション」を私は創作してきた。しかし題材にするのを注意深く避けていた画家がいた。フィンセント・ファン・ゴッホである。
今や美術史上で最も知名度が高く、世界中の美術館に作品が収められているゴッホは、私にとっても長年気になる存在であったが、一度手を出すと深追いしてしまうだろうという予感があった。結局、ゴッホを主人公のひとりにした小説を上梓したのだが、予感は的中し、その後もゴッホを追いかけ続けることになった。
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source : 文藝春秋 2020年6月号