「これぞまさに書聖。こんな字が書きたい!」
2013年に東京国立博物館で開催した特別展「書聖 王羲之(おうぎし)」のスタッフとして名品に触れてはや10年、この春、東京国立博物館との連携企画20周年で、ふたたび王羲之の展覧会を実施することになりました。
彼の書は、ためつすがめつ眺めるたびにググッと引き込まれます。
王羲之が活躍したのは、風雅な貴族文化が爛熟した中国・東晋時代(317〜420)、日本でいうと古墳時代です。王羲之は、この頃すでに書の芸術性を飛躍的に高め、今でも能書の代名詞として称えられています。1600年以上の時を超えて、なぜ愛されるのでしょうか?
展覧会の準備で作品と対峙し、あらためて感じたのは、その書の革新性です。
今回のメインである王羲之の最高傑作《蘭亭序(らんていじょ)》にしても、現代の私たちからすると「あたり前の字姿」だと受け取ってしまいがちですが、それは私たちが王羲之以降の書の歴史をすでに知っていて、王羲之の影響を受けた字に見慣れているからです。
王羲之以前の後漢時代は、ヒゲのような装飾のついた古風な隷書(れいしょ)が一般的でした。その後は楷書へと移行する過渡期で、草書や行書が完成に近づきつつありました。こうしたタイミングで登場した王羲之は、全ての書体のレベルを一気に押し上げ、美しさに磨きをかけたのです。
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source : 文藝春秋 2023年4月号