「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」「宇宙海賊キャプテンハーロック」など、壮大なスケールのSF作品を手掛けた漫画家の松本零士氏が2月13日、急性心不全のため他界した。85歳だった。松本氏は生前、他に原作者がいるにもかかわらず、「『ヤマト』は自分がほとんど一から作った」と主張し続けた。松本氏はなぜそこまで「ヤマト」に固執したのか。そして、どこか陰りを帯びた謎の存在であるハーロックの正体と「ヤマト」との知られざる関係とは――。サブカル系ライターとしても有名な朝日新聞の太田記者が、哀しみに包まれた松本作品の核心に迫る。
◆◆◆
なぜ「ヤマト」にここまでこだわるのか
松本零士氏が亡くなった際、一般メディアで「銀河鉄道999」と並んで、代表作として言及されることの多かったのが「宇宙戦艦ヤマト」だった。
しかし、木村拓哉主演で実写映画化された「SPACE BATTLESHIP ヤマト」(2010年)でも、13年にテレビ放映された「宇宙戦艦ヤマト2199」に始まり、現在も続くアニメ版のリメーク・シリーズでも、原作者とされているのは故・西崎義展プロデューサー1人で、松本氏の名前は作品クレジットのどこにもない。
松本氏は1999年、西崎氏が覚せい剤所持や銃刀法違反などの現行犯で逮捕されて以降、「自分が『ヤマト』の本当の原作者」との主張を繰り返すようになった。しかし、獄中の西崎氏との訴訟合戦の結果、松本氏の主張は全面的に退けられ、今日では「西崎氏が原作者」との判断が法的に確定している。
僕は当時、「週刊朝日」「AERA」の記者として、西崎氏の逮捕の内幕や裁判の状況を取材していたが、記者としての目からも、長年のヤマトファンの目からも、松本氏の主張には無理があると言わざるを得なかった。松本氏が、「ヤマト」の制作にあたって多大な貢献をしたことは疑いないが、作品の基本設定自体は、松本氏が制作スタッフに加わる以前にすでに固まっていたからだ。
しかし、松本氏は敗訴後も「『ヤマト』は自分がほとんど一から作った」という主張を一切変えなかった。晩年にもヤマトそっくりの艦「超時空戦艦まほろば」が主役のアニメを企画したが、実現せずに終わっている。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
今だけ年額プラン50%OFF!
月額プラン
初回登録は初月300円・1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
オススメ! 期間限定
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
450円/月
定価10,800円のところ、
2025/1/6㊊正午まで初年度5,400円
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋