父茂吉の御骨尊みみづからに祀(まつ)りゐき北杜夫われは羨(ともし)む
宝泉寺茂吉の墓に今は亡き人の思ひに納骨をしき
山頂のあたりが映えて蔵王より顕つ虹見をり今日のつれづれ
蝕甚の月に光のかへりつつ遅き雨戸を閉ぢたり今日は
生涯の快挙と言ひてしのび居りアイスランドに見たるオーロラ
老人の二人暮らしは食品のロス多く日々心のいたむ
わが心満たしし銀座「酒の穴」コロナ禍ゆゑに三年(みとせ)遠のく
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source : 文藝春秋 2023年5月号