「人生を決めた本」というお題をいただいた。なんというざっくりとしたご依頼。
わたしは最近「ぶん投げスタイル」と呼んでいる。良くあるのだ、ドラマの宣伝のとき「この作品の見どころはなんですか」って、こちらに放り投げてくる質問。それは、ドラマをご覧になってくださあい。先日はインタビューで「転機になった作品はなんですか」と聞かれた。そんな大雑把な質問をぶん投げられると、簡単に教えてあげないもん、という気分になる。色々と過去を振り返る対話の中で、ではその作品が転機になったんですね、と導き出してくるのがインタビュアーの仕事ではないだろうか。
わたしにとっては、どの作品も毎回、失敗と反省と学びの繰り返しで、言ってみれば全ての作品が転機だと思っている。
それでもって、「人生を決めた本」と来た。なんとなく格好いい見出しで攻めてくる。文藝春秋よ、おまえもか。人生、1冊で決まらないよ。ていうか、わたしの人生まだまだどうなるかわからない。何も決まっていないのだよ。
しかしお引き受けしてしまった。「人生を決めた本」は、考え方に影響を受けた本、折に触れ読み返す本でも結構です、と添え書きがあったので、そちらの解釈で考えてみようと思う。
小学校3年生の時、教室の外の廊下に背の高い本棚があり、そこに並んだ名探偵ホームズシリーズに夢中になった。調べてみたら、当時ポプラ社から出版されていた子供向けバージョンだったようだ。
『恐怖の谷』『夜光怪獣』『まだらの紐』、ずらりと並んだタイトルがおどろおどろしくて、怖いもの見たさで手に取ったのだと思う。『踊る人形』好きだったなあ。
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source : 文藝春秋 2023年5月号