がんはつくづくやっかいな病気だと思う。一度かかると、めったなことでは完全治癒、無罪放免とはならない。通常、手術後五年を経過すると治ったとみなされる。しかしそれはあくまでも「みなし治癒」であって、実はたいてい再発の可能性という時限爆弾が付いている。
つい先日、家の近くの交差点で信号待ちをしていたら、
「最近お身体はどうなんですか?」
と、見知らぬ老婦人から話しかけられた。
「ええ、まあまあです」と、あいまいに答えると、
「TVでは、『再発必至』とかいわれてましたけど、大丈夫だったんですか?」
〇七年に、膀胱がんを宣告されたとき、「これは多発性だから再発は必至です」と主治医から予告されていた。
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source : 文藝春秋 2014年8月号