第三次安倍政権の最重要課題は、アベノミクスによるデフレ脱却と日中首脳会談後の日中関係の本格的立て直しでなければならない。
このうち、日中関係については昨年11月の北京APECに合わせ、両政府は「4項目の文書」を発表、その後、首脳会談を行った。
文書の3項目目は「双方は、尖閣諸島など東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し、対話と協議を通じて、情勢の悪化を防ぐとともに、危機管理メカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避することで意見の一致を見た」と述べている。
一言で言えば、「東シナ海の緊張」をめぐって双方は、agree to disagree(合意できないことで合意した)であることを双方が認めたということである。
日中両国は1972年の正常化以降、尖閣諸島の領有権については、「より賢い将来の世代に解決を委ねよう」という「妥協もしなければエスカレートもしない」事実上の先送り策で臨んできた。
しかし、尖閣諸島を含む東シナ海の緊張は、島の領有権だけではなく、海洋戦略、エネルギー、台湾、歴史問題など複雑な要素が絡みついている。
問題の根底には、中国の海洋に対する戦略的意思の高まりがある。中国は、東シナ海(と南シナ海)を核心利益と見なし始めている。日本を無力化させ、日米同盟を弱め、米国を西太平洋から退却させる長期的かつ攻撃的な海洋戦略を模索しつつある。
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source : 文藝春秋 2015年2月号