AIIB加盟の論理

新世界地政学 第46回

ニュース 社会 経済 中国

 アジアのインフラ投資を推進するための中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)がこのほど57カ国で発足した。この中に、日本と米国の姿はない。中国が仕切るAIIBのガバナンスと透明性に多くの疑問があるため、日米とも現段階では留保するとの立場である。

 私は、1月号のこの欄で、日本はAIIBに加盟するべきであると主張したが、今回改めて、日本加盟の戦略的意義を述べたいと思う。

 第一に、AIIBは、アジアの国々とともにアジアの地域アーキテクチャーと地域秩序をつくる戦略的課題ととらえるべきである。日本が加盟しなければその歩みは滞る、いや失敗に終わるだろうと見るのは錯覚である。インドを筆頭に、巨大なインフラ需要がそこにある。日本の21世紀の大戦略はインドの発展を手伝い、日本との分厚い協力関係をつくることである。AIIBのミソは、チャイナ・マネーもしっかり使って、インドを躍進させることにある。そう割り切ればよい。

 日本は長年、アジアに対する世界1位の援助供与国であり続けてきた。現時点でも、日本の政府開発援助は年間100億ドル以上、そのうち60%近くがアジア向けである。それに対して、中国のそれは年間50億ドル、アジア向けは30%。しかも、日本にはJICA(国際協力機構)のような世界に誇る技術援助のプロ集団がいる。日本はそうした技能と経験をAIIBに提供することができる。それは戦略的関与にほかならない。舞台に上がらないことには演技もできない。お家芸も発揮できない。観客で終わるだけだ。

 次にAIIBに加盟することで、AIIBをアジアと太平洋をつなぐ機構へと広げることができる。

 中国は、AIIBを「域内国」と「域外国」に分け、「域内」を国連ECAFE(現ESCAP)の構成国と定義している。これだと中東は「域内」、北米・ラテンアメリカは「域外」となる。この点はアジア開発銀行(ADB)も同じである。

 ここは「域内」の定義をアジア太平洋へと拡大する必要がある。なかでも北米・ラテンアメリカのOECD(経済協力開発機構)加盟国である米国、カナダ、メキシコ、チリは援助供与国として「域内」加盟とするべきである。この4カ国はいずれもTPP(環太平洋パートナーシップ)国である。

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source : 文藝春秋 2015年6月号

genre : ニュース 社会 経済 中国