「日米同盟」と「皇室」──文春には2つの底流がある
「『文藝春秋』の編集長に挨拶しておいた方がいい。そうしないとどんな弾が飛んでくるか分からない」
最初にそんなアドバイスをしてくれたのは、新潮社の伊藤幸人さんでした。2005年頃のことで当時、私は鈴木宗男事件で背任・偽計業務妨害の罪に問われ、刑事被告人の立場にありました。伊藤さんは、私が事件の真相を書いた『国家の罠』の担当編集者でした。この本を皮切りに、私が執筆活動を始めたこともあって、文春にも活動の場を広げさせようと、伊藤さんが気遣ってくれたのだと思います。
ただ、「週刊文春」は、事件に関連して私のことを「鈴木宗男の運転手をしている」などと厳しく叩いていたので、気が進まなかった。誤りのある記事で、私への取材はなかったし、そもそも日本の運転免許証を持っていない。だから、嫌々会いに行ったのが正直なところです(笑)。
伊藤さんが繋いでくれたのは、「文藝春秋」編集長だった飯窪成幸さん。会うなり「何しに来たんだ?」と言わんばかりの警戒モードでしたね(笑)。こちらの目的を捉えあぐねていたのでしょう。私も手ぶらで行くわけにもいかず、何か企画を提案した方がいいだろうと、作家の井上ひさしさんとの対談を持ち掛けたんです。井上さんは私の仕事を買ってくれていました。
ただ、飯窪さんは全然乗ってこない。「外務省の暴露モノをお願いしたい」などと言ってきたので、私は「暴露は嫌いです」と応じたのを覚えています。その後、色々と議論する中で決まったのが、2005年6月号に掲載された「外務省のラスプーチンが見た 中国と田中均 日本外交の罠」という記事でした。聞き手は編集長の飯窪さんでした。
中国国内で起こっていた反日暴動に対する政府の対応の不味さを指摘し、外務省の内情を踏まえながら、対米、対ロ、対北朝鮮外交の問題点を論じるのが、この記事の眼目です。対北朝鮮外交のくだりでは、アジア大洋州局長だった田中均氏が、2002年に拉致問題に関して、国会で涙ながらに自分の正当性を訴えたことを辛辣に批判しています。官僚は自らの感情を押し殺し、淡々と職務を遂行すべきだというのが私の考えであり、涙を見せるのは情緒不安定な証拠で、評価に値しないとかなり厳しく書きました。
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source : 文藝春秋 2023年8月号