著名人が母親との思い出を回顧します。今回の語り手は、齋藤 孝さん(教育学者)です。
母は、激甘だった。叱られた記憶がない。大きな声も聞いたことがない。
幼い頃の私は、だるま。重ね着がひどい。ここで生涯の寒がりが決定した。
「そっかね、そっかね。そいじゃあ、よかったよ」が口癖。同調が基本で対立はしない。テレビにも頷いていた。
何か一つ終わると「そいじゃあ、慰労会でもしようかねぇ」が口癖。
私が高校時代、運動部でよく寝ていたので、「孝は毎日寝てばっかりで勉強は大丈夫かねぇ。代わってあげたいよ」と言っていたが、学力的にもムリだった。
小学校の行事の朝、母が急な腹痛に襲われた。救急車が来るまで私の弁当を作っていた。結石だった。
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source : 文藝春秋 2023年9月号