子をもって知る……

オヤジとおふくろ

山本 一力 作家
ライフ ライフスタイル

著名人が母親との思い出を回顧します。今回の語り手は、山本一力さん(作家)です。

 昭和三八年九月。都立工業高校一年二学期早々、母を騙してイタリア製タイプライターを購入してもらった。

 いまに至るもわたしはキーボードを叩いて、原稿執筆を続けている。

山本一力氏 ©文藝春秋

 起こりは遠い昔の、あの九月にある。

 父と協議離婚後、母は妹とわたしを引き取り高知市内で母子家庭を構えた。

 昭和三六年に失職するなり、東京なら仕事もありそうだと上京を決めた。妹と母とで先発。翌年五月にわたしも上京。母子三人で新聞専売所に住み込んだ。

 米国ミズーリ州の同い年女子と文通を始めたのも中三だった昭和三七年夏だ。

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source : 文藝春秋 2023年8月号

genre : ライフ ライフスタイル