■企画趣旨
なぜ若手社員、優秀な社員の離職を止められないのか。労働条件、職場環境、成長機会、キャリア形成などといった働くことへの「希望」と「失望」の間にあるギャップに離職を決意するケースは少なくありません。給料が上がらない、人間関係がうまくいかない、意見を聞いてもらえない、3年後の自分が想像できない・・・企業側は、従業員の声に寄り添い、最適な条件・環境・機会を提供していくことが不可欠となっています。
特に若手社員の早期離職は、採用コスト、教育コスト、人員補強コストの面から企業経営に与える影響は大きく、人材不足が叫ばれる中、喫緊の経営課題として対策が急務となっています。
本サミットでは「離職防止」をテーマに、若手社員、優秀な社員が離職を決意する「希望と失望」のギャップに焦点を当て、社員の期待に応えるための環境づくり、失望を防ぐためのエンゲージメント、上司と部下のコミュニケーション、全社一体となったやりがいの創出などについて、多様な視点から考察した。
■基調講演
早期離職の因果
~ 若手社員の離職が加速する、働くことへの“希望”と“失望”の境界線 ~
高崎経済大学 経済学部 経済学科
准教授
小林 徹氏
慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程修了。独立行政法人労働政策研究・研修機構を経て、2018年より現職。労働経済学の理論およびデータを用いた労働市場に関する様々な課題に対する研究に取り組む。主要な研究業績に「新規学卒者の就職先特徴の変化と早期離職の職場要因」『日本労働研究雑誌』(単著、2016年)、『ジョブマッチングの成立と「人柄」「社風」情報の重要性』『日本労働研究雑誌』(単著、2013年)などがある。
◎研究から見えてきた、早期離職の職場要因
若年者の早期離職に関する研究・議論は1990年代後半から進んできた。若者個人の意識変化や就職時の経済環境に影響される、という研究の蓄積が進み、2010年以降は、学卒時の就職環境が最も重要な要因である(経済環境の悪影響は景気回復後も当該世代に長期的に継続する)という論調が主流になっている。
ただし、学卒時の経済環境が良好な2010年以降の求人倍率はいずれも1.2を超えているにも関わらず、離職率は3割超の高い水準を保ったままだ。よって、就職後の内部労働市場、人的資源管理の違いに基づく「職場要因」を検証する必要が出てきた。
労働経済学や計量経済分析の手法により、様々なデータを分析して得た結論を述べる。まず「職場内要因」としては、「同一職場内属性外要因」の影響が大きい。これは例えばメンバーシップ型雇用を止めジョブ型へ変化したような要因であり、もともとは離職しにくい特徴があった大卒就職者が、就職先の職場の違いによらず辞めやすくなってきている。以前は離職しにくかった製造業などの職場や、長期雇用慣行のある離職しにくかった労働者層でも離職率が高まっている。
その理由としては、規模や産業が同じであっても内部労働市場や人的資源管理が変化した影響が考えられる(個人の意識変化も否定できないが、個人意識は就職環境やHRM※などの就業環境変化を反映する)。
※HRM=Human Resource Management。人的資源管理、人材マネジメント
「職場間要因」で影響が大きいのは「職場間属性外要因」だ。こちらは例えば、産業構造変化や技術進歩による業務変化などの要因。そもそも、情報通信やサービス業などの離職率が高い職場に以前よりも多くの学卒者が就職した結果、離職率の増加が維持されている(以前と近年の若年者の個人属性が同じであっても)。産業構造などの変化、技術進歩によりタスク需要が変化した影響が考えられる。
◎若年社員の希望と現実
経済環境や雇用システムなど、環境が変わると労働者の意識も変化する。マイナビの2023年の調査によると、就職氷河期には“意識高い学生”が増える。つまり、就職が厳しくなると「社会貢献」意識が高まり、反対に容易になると「楽しく働きたい」が高まる。近年は「個人の生活と仕事を両立させたい」入社前学生が増え、企業選択のポイントは安定と高収入となってきた。
2017年の内閣府の入社後の若手に対する調査では、仕事の目的は「収入」であり、「達成感や生きがい」「能力を発揮するため」は低い。「安定して長く続けられること」「収入が多いこと」を重要視している。転職については条件付き容認派が最大多数であり、積極的な姿勢の者よりも否定的な者がより多い。
しかし現実は甘くない。「労働者が自らの意志でリ・スキリングを行い、職務を選択できる制度に移行」「労働者が自らの選択によって労働移動できるようにすることが急務」「リ・スキリングによる能力向上支援/個々の企業の実態に応じた職務給の導入/成長分野への労働移動の円滑化という三位一体の労働市場改革」といった、内閣府発表の『経済財政運営と改革の基本方針2023』に記された文言のように、安定を希望する若手にとって現代は厳しい労働環境となっている。
◎変化する職場の中での離職防止を考える
労働者の技能は大きく二つある。企業特殊的技能:特定の企業でのみ有用な技能(専用端末操作スピードなど)と、一般的技能:どの企業でも通じる技能(英語力など)だ。後者の技能が高い者は、転職後の生産性≑賃金と転職前の生産性≑賃金がほぼ等しくなり、転職が容易である。
よって、自社で働く生産性を高める「企業特殊的な何か」が離職防止には重要だ。「当社に所属している方があなたの生産性(収益性、社会的価値)は高い。辞めたら元に戻りますよ」という状態を作り、賃金上昇(安定的な収入上昇)に反映させると離職防止につながる。
今後は、先端ツール導入でジョブ型人材の生産性を高めるという方策が有効である。例えば、データアナリスト×専門の統計ソフト、設計技術者×3D-CAD。ツールの有無による生産性の変化のみを考える。ツール無しの生産性≑賃金<ツール導入後の初期賃金<ツール導入後の生産性、と言う環境を継続し離職を防止しつつ、ツール導入費用を回収する。導入費用回収後にツール導入後の生産性≑ツール導入後の本来賃金とし、離職防止効果を高める。
また、AI導入による全労働者平均への影響について「AI指標は雇用安定にプラス、賃金上昇にプラス」という分析結果が海外では発表されている。私も研究に関わった日本のデータ(JHPS)でも、先駆けたAI導入と労働指標にはポジティブな関係性の傾向が見られた。
◎まとめと提言
欧米型のジョブ型は、ギルドなどの職業別組合の伝統があって成り立っているように思える。ジョブ型に向く、専門化できる職業とそうでない職業に分けて考えたい。ジョブ型に向く職業分野では、学会のような職業別コミュニティが組織され、外部労働市場でのマッチングや人材育成を行う(企業横断的な人事部というイメージ)。各企業は、当該職業での入社社員については詳細な雇用契約書や職務記述書を作り、書面に基づく業務命令を行う。
また、全社的な業務のマネジメント、複数部署調整、縦割り防止などに秀でているゼネラリストの養成も一部で残される必要があると考える。そこではメンバーシップ型の雇用制度を依然として適用すべきだろう。今後は各企業において、ゼネラリストとスペシャリストのミックスやタッグが求められていく。
■課題解決講演
Z世代や優秀な社員との期待値ギャップをなくし、
魅力的な組織を作るポイント
株式会社SmartHR
プロダクトマーケティングマネージャー
埜村 勇斗氏
大学院卒業後、デロイトトーマツグループやリンクアンドモチベーションにて組織人事コンサルティングに従事、成長企業のエンゲージメント向上や組織風土づくりに関わり、その後スタートアップの経営に参画。2020年にSmartHRに入社し、タレントマネジメントに関する機能の企画や仕組みづくりを行う。
◎アンケートからわかる若手社員・優秀層の離職の特徴
若手社員・優秀層の離職には大きく分けて3点の特徴がある。
ひとつめは、そもそも自分がやりたいことがわかっていないという点だ。内閣府の調査によると、16~29歳の離職要因は「仕事が自分に合わなかった」が断トツで多いが、最近の若手の傾向を考えるとそもそもやりたいことが明確ではなかったり、自分に合う仕事がわかっていないと言える。 ふたつめは、優秀層ほど成長ややりがい・報酬を求めるという点だ。ラーニングエージェンシーが実施した、新入社員研修を終えた後のアンケートでは、「この会社でずっと働きたい」と回答した人は、安定した生活を送りたい/家族に恩返しをしたい/社会に貢献したい、とも答えた比率が高い。一方、「いつか辞めると思う」と回答した人は、自分を成長させたい/大金を稼ぎたいとも答える人が多かった。後者は成長意欲が高い、優秀層、と言ってもいいだろう。
3つめの特徴は、会社や顧客貢献への期待が低いという点だ。新入社員は「仕事を通じてやりがいや充実感を得る」「自分の能力を高める」ことに関心があり、成長意欲やスペシャリストとして専門性を高める意欲が高い。一方、会社への帰属意識、顧客への貢献意欲は低いといった傾向が日本能率協会が2020年に行ったアンケートでは読み取れる。
ハイパフォーマーの中で仕事に満足している人は50%未満/仕事の満足度を最も左右する要素は基本給で次が賞与。ハイパフォーマーはこの2つをはるかに重視/勤続年数に基づく給与あるいは成果の優劣がほとんど反映されない報酬制度は、ハイパフォーマーの離職を促す最大の要因、とのことである。(『ハーバード・ビジネス・レビュー』から引用)
一方でマネジメント層に対する調査ではマネジメント層はZ世代は成長やキャリアアップ、実力主義に関心がないと認識しており、先述の新卒層の実情とは大きなギャップがある。(『月刊総務』の2022年の調査より)
ともあれ、アンケート結果では能力やお金、ワークライフバランスなどいろいろな回答が離職の要因として浮かび上がってきたが、マネジメントは全ての期待や要望に応える必要はない。なぜなら会社が提供できるものは無限ではないからだ。従業員側の認識を少しずつ変えることも大事であり、事業モデルに合わせて効果が出る施策に絞る、といったことを意識すべきだ。また、会社へのエンゲージメント※も意識すべきだ。
※従業員の仕事に対する活力の高さや、組織への愛着・コミットメントを示す指標
◎自社に合った離職防止策を考えるフレームワーク
社会心理学的には人が組織に感じる魅力は大きく目標/活動/組織/待遇の4つがある。その中でも差別化しやすい魅力は「目標」と「組織」である。「目標」の魅力とは、会社の理念・行動指針や事業戦略など会社の方向性・目標に対する共感。「組織」の魅力とは、組織全体の雰囲気や組織に所属する個人が当事者として帰属意識が芽生えること。この2つを重視したい。また、個人のゴール(目標)をマネジメント層が会社のゴール(目標)に結びつけることも離職防止には有効だ。さらに、事業の価値の源泉(商品・仕組み⇔個人力)や事業ドメイン数(単数⇔複数)に合わせて、組織の強みを考えたい。商品・仕組みが価値の源泉となる事業や個人の専門性が価値となる事業など、事業の特性に合わせた組織づくりを考えるべきだ。
◎離職要因の改善と組織づくりに役立つサーベイの調査項目
クラウド人事労務ソフト「SmartHR(スマートエイチアール)」 は、必要なデータが自然と集まる仕組みにより、「人事データをいつでも活用できる」状態をつくりだせる。さまざまな組織課題を明らかにするサーベイの質問雛形を18ジャンルで多数用意しており、組織や従業員の状態を把握したり改善するためのサーベイを簡単に実施できるのが魅力だ。
組織へのエンゲージメントを高めるポイントは、「心理的安全性」と「キャリア安全性」である。前者は、チームの誰もが非難される不安を感じることなく、自分の考えや気持ちを率直に発言できる状態。後者は、自身の現在・今後のキャリアが今の職場でどの程度安全な状態でいられると認識しているか。
サーベイ活用の重要な切り口は以下。(1)ワーク・エンゲージメントの把握・向上 (2)心理的安全性の把握・向上 (3)従業員のキャリア希望や悩みの把握・改善 (4)サーベイデータを活用したマネジメント、である。
(1)のワーク・エンゲージメントは、高いほど業績や従業員の定着に好影響を与えると言われる。SmartHRではアウトカム/心身の健康/上司など、多様な項目を持つサーベイを用意しており、先述の組織の4つの魅力因子――目標/活動/組織/待遇――に合わせてサーベイを分析しワーク・エンゲージメントの把握・向上に寄与することができる。
(2)の心理的安全性にはそれを活用する取り組み=実践と、高める取り組み=醸成がある。心理的安全性の実践と醸成を比較し、実践と醸成の両方が低い場合はまず実践をするための関係性構築を重視して醸成に取り組みたい。醸成だけが高い場合は“仲良し組織”になっている危険性がある。良好な関係を建設的な議論に活かせるように実践に取り組もう。(3)(4)も(1)(2)同様にサーベイの活用で実現できる取り組みである。
若手社員や優秀な社員の離職を防ぐには
・会社を好きになってもらって自社でやりたいことを見つけてもらう
・心理的安全性やキャリア安全性も意識してエンゲージメントを高める
・上司が中心となってキャリア掲載や組織への愛着を高める
こうしたサーベイツールも活用して、従業員との期待値ギャップをなくし、魅力的な組織作りに取り組んでいただければ幸いだ。
■ゲスト講演(1)
退職代行の視点から見た若手社員、
優秀な社員の離職が止まらない理由
~ 離職・退職代行の利用を決意する瞬間 ~
センチュリー法律事務所 弁護士
小澤 亜季子氏
事業再生・倒産を主力業務とする企業法務系法律事務所に入所し、現在に至る。独身時代は「趣味は仕事」のワーカホリックだったが、実弟の突然死や自身の妊娠・出産・育児などを経て「働く」ことに対する考え方が大きく変化。2018年8月、退職代行サービスを開始。テレビ、ラジオ、新聞、ウェブニュースにコメント等を多数提供。21年より2年間の官公庁出向を経て、組織で働くことの楽しさ・難しさを身をもって理解。退職・解雇、ハラスメント等の労働トラブルについて、労使双方の立場から日々取り組んでいる。
◎退職代行サービスの概要/退職の理由
退職代行とは、様々な事情により退職したいができない人に代わり、退職の交渉を行うサービス(非弁護士業者の場合、伝達のみ)。実は、全国の労働局・労働基準監督署の総合労働相談コーナーに寄せられる相談のうち「自己都合退職」に関する相談は、「いじめ・嫌がらせ」に次いで多く、年間4万2649件(令和4年度)だ。「解雇」関連の相談より多いのである。
法律上は従業員は簡単に退職することができる。しかし、安くはない料金を支払って退職代行サービスを利用する人は少なくない。実際に利用した人からのヒアリングによると、退職の理由は、(1)事前に確認していた条件と違う (2)業務を教えてもらえない、引き継ぎ不足 (3)業務過多、長時間労働、業務の偏り (4)パワハラ (5)その他コンプライアンス違反 (6)人間関係 (7)不本意な異動 (8)給料が不満 (9)プライベートの事情、に大別される。(1)が非常に多い。
◎退職代行サービスを希望する理由/サービスを利用されないために
そして、退職「代行」を希望するということは、従業員が会社側との直接のコミュニケーションを拒否するということ。利用する理由は、(1)退職妨害 (2)過去の退職者とのトラブル(を見聞きして) (3)体調不良等 (4)恐怖、忖度、遠慮等 (5)会社への嫌悪感等 (6)権利行使等 (7)人間関係良好、縁故採用、である。
会社・経営側は、退職代行を使われると、直接従業員に対して退職理由や職場の問題点等をヒアリングすることはできない。弁護士を介して質問したとしても、まず本音は伝えてもらえない。引き継ぎも弁護士を介在して実施するため、手間がかかる。また、退職代行に対するネガティブな印象から職場の雰囲気が悪化する恐れもある。
退職代行を利用されないために、以下を推奨する。
退職代行を使われることは、会社にとっては無意味であり悪影響がある。退職者は突然、衝動的に辞めることはほぼなく、日々の不満が溜まりコップの水がこぼれるように閾値を超えて退職に至る。最後の項目に記したように、常日頃から従業員の本音・不満を吸い上げる仕組みを作っておき、退職者からは本当の退職理由や会社への不満を吸い上げる努力をしたい。退職者の本音に職場改善のヒントがある。
■ゲスト講演(2)
日本で一番大切にしたい会社、萩原工業が取り組む人材育成
~ 働き続けたい、働きやすい会社の条件 ~
萩原工業株式会社
代表取締役社長 社長執行役員
浅野 和志氏
広島大学工学部卒業後、萩原工業に入社。製品開発部門を経験の後、総務・経理などの間接部門に携わり、取締役執行役員事業支援部門長、同常務執行役員合成樹脂事業管掌補佐を経て、2016年に代表取締役社長に就任。企業スピリットは「おもしれぇ 直ぐやってみゅう」。
岡山県倉敷市が本社の当社は、特産のいぐさを用いた商品や畳表の製造が祖業。現在は「フラットヤーン※」を使ったブルーシートや防災関連商品、レジャー・アウトドア関連商品、建築・土木・農業資材、粘着テープ、人工芝などの合成樹脂加工製品と、機械製品(スリッターなど)を製造販売している。
※フラットヤーンとは、ポリエチレン、ポリプロピレンのフイルムを短冊状にカット(スリット)し、延伸することにより強度を持たせた平らな糸
現在、グループの拠点は世界14カ国27拠点。コーポレート・スローガンは「当たり前をハミダセ、新たな価値をアミダセ。」である。主力製品のブルーシート関連事業では再利用、リサイクルシステムの構築に注力。再生ブルーシートのリサイクル率は25%を達成し、エコマークの認定を受けた。さらに25%以上のリサイクル率を目指している。
◎日本でいちばん大切にしたい会社大賞
2018年3月に「第8回日本で一番大切にしたい会社大賞」で最高賞となる経済産業大臣賞を受賞した。主催者発表の主な受賞理由は以下。
・創業から上場企業となった今日まで、業績ではなく社員の雇用と生活を第一に、どんな厳しい時代であっても、社員のリストラをしない経営姿勢。
・正社員比率が86.9%と特別な理由がない限り、全社員を生活安定する正社員として雇用。
・トップの部屋にはその社員に関するメモが入った全社員の顔写真があるばかりか、全社員の誕生日には、トップのメッセージカードを添えたお菓子の詰め合わせをプレゼント。
・社員1人あたりの月間所定外労働時間は7時間程度
企業運営は、社員とその家族の健康と幸せがあってこそ。働いている社員が幸せでなければ、いい製品、いいサービスは生まれないと考え「人間本位主義経営」を実践している。当社の社風・文化を表すキーワードは、感謝・挑戦・成長/とにかくやってみる/挨拶/躾/若手に任す/自由/風通し/実力人格重視、だ。人を大切にしている会社である。
職場環境改善のために、社員のお子さんが通える企業主導型保育所を開園し、1時間単位で有給休暇を取得できる制度や就業時間を1時間前倒しできる制度を導入した。禁煙対策や65歳までの定年延長、食堂でのヘルシーメニュー考案なども行った。また、社員の多様性の確保、ガバナンス向上/業務改善活動、働き方改革、コミュニケーション能力向上、組織環境の整備(図表参照)にも取り組んでいる。「言える化・聞ける化」は事業計画の遂行のためにも重視している。
◎経営者の心得/萩原工業での学び
前社長の薫陶もあり、以下を意識している
(1)社長は単なる役割分担、主役は一般社員
(2)笑顔と理念の実践
(3)善行動率先垂範
(4)人材長所51点主義で信頼活用
(5)可能な限り権限委譲(仕事を通じて人は育つ)
(6)「和」を大切に
「気付きに勝る学習なし」である。当社は押しつけ的研修は行っていない。会社は“気づかせてあげる経験の場”を与えてあげることが大切。例えば、海外の子会社に一人で行かせれば「英語はやはり必要だ」と気づき、自分で学ぶ。先述の「言える化・聴ける化」と、SmartHRの埜村さんの話にもあった、目標設定・理解促進とその正確な評価も重要だ。気づかせる経験をさせ、目標を設定し達成感を味わってもらうと人は成長する。
2023年8月23日(水) オンラインLIVE配信
source : 文藝春秋 メディア事業局