車は記憶の乗り物である
年季の入った自動車趣味で知られる著者が、クルマを通して蘇る記憶を綴る。タイトルに嘘はない。クルマそのものよりも、少年時代、若き日のバンド活動、結婚生活、友人、旅行、仕事のドタバタ、日常生活の喜びと後悔などなど、クルマの向こうに見える「風景」についての随筆集。右に見える競馬場、左はビール工場――後の妻を八王子の自宅まで車で送る情景を歌った「中央フリーウェイ」の意外な実相も明らかになる。
本書に限らず著者の随筆の美点は、極めてフラットでニュートラルな筆致にある。若くして成功したミュージシャンにしてプロデューサー、しかも奥方は大スター。華やかな音楽界を生きてきたにもかかわらず、思考と行動が驚くほど普通で常識的。「世の中には自分よりちゃんとした人間が半分、自分よりちゃんとしてない人間が半分いる、と思っている」――アーティストにありがちな尖ったところがない。だから広範な読者の共感を惹きつける。
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source : 文藝春秋 2024年4月号