〈ヒルトンにいる父親に、小池は会いに行く。するとある日、白い大きな巾着袋のようなものを手に提げて、アパートに帰ってきた。
小池はその巾着袋をテーブルの上に置くと、北原さんの眼をじっと見つめながら、無言で巾着の口を握っていた手を離した。
ガチャガチャと音を立てて巾着は四方に広がった。中から現れたのは、コーヒーカップ、皿、ナイフ、フォーク、シュガーポット……。〉
これは『女帝 小池百合子』(文春文庫、石井妙子著)に描かれた、都知事の小池百合子氏がエジプト・カイロに留学していた時代の、あるエピソードである。
『竹村健一の世相講談』(日本テレビ)のアシスタントから、『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京)のキャスターに抜擢され、1992年に日本新党から出馬。環境大臣や防衛大臣を務め、一時は「総理候補」とまで呼ばれ、現在、3期目の都知事の座を目指している彼女の物語の原点は、カイロにある。
彼女は1971年、関西学院大学社会学部を中退すると、カイロに渡った。1972年の春、語学研修生として派遣されていた大手商社マンの男性の仲介で出会ったのが、11歳年上の北原百代氏だった。2人はアパートを探し、ほどなくして高級住宅地・ザマレックのアパートで同居生活を始めた。
悪びれることなくホテルの備品を持ち帰った
小池氏と北原氏が同居している頃、しばしば日本からカイロを訪れたのが、父親の小池勇二郎氏である。彼はいつもナイル・ヒルトンホテルに宿泊し、すると小池氏も父に会いにホテルへ行っていたという。そしてある日、小池氏は巾着袋を持って北原氏の待つアパートに帰ってきた。その巾着袋からは、コーヒーカップ、皿、ナイフ、フォーク、シュガーポットが出てきた。冒頭のシーンはこう続く。
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