毎年12月に陸上自衛隊とアメリカ陸軍が合同で行う大規模軍事演習、通称「ヤマサクラ」。今年、そのシナリオで“仮想脅威”としてインプライされたのは、なんと「韓国」だったーー。外交上で日本に刃を向ける隣国が、ついに日米同盟に対峙する
導火線に火をつけた「海底油田」のボーリング
すべては、その衝撃的なニュースから始まった―。
日本の海洋調査団の発表によれば、新潟県沖数キロ先を起点として、北西へ約600キロまでの海域、また東西の幅は約50キロ―その範囲に巨大な「海底油田」を新しく発見、マスコミは大騒ぎとなった。海外のエネルギー資源に依存する日本にとっては誠に喜ばしいニュースだった。
しかし問題があった。途轍(とてつ)もなく大きな問題が――。
その「新しく発見された海底油田」(以下、「海底油田」)は、日本海を挟んだ隣国、「A国」のEEZ(排他的経済水域)にも含まれていたからだ。「海底油田」の領有権を巡って、日本政府と「A国」政府との“政治的葛藤”が、海洋調査団の発表後すぐに始まったのは自然な成り行きだった。
問題はそれだけで収まらなかった。「A国」の隣国、「B国」も巻き込んで東アジア全体の緊張へと発展した。「B国」は、日本の調査団の発表とは違い、「海底油田」の一部が、自国のEEZ内にも入っていると主張し、領土的野心を示したのである。日本政府と、2つの国の政府との政治対立は、日を重ねるごとに激しさを増した。特に、「A国」と「B国」の激昂する世論の矛先は、日本を批判する一方、それぞれの政府へも向けられることとなって事態は急変。国連の安全保障理事会(安保理)が、度重なる開催となったが、常任理事国である「B国」が拒否権の発動を繰り返し、安保理は機能せず。しかも、「A国」と「B国」の政治指導者たちは、自国での激しい市民デモと世論の拡大に押され、政治的決断を迫られた。
そして、日本政府が、両国との事前協議をせずに、「海底油田」のボーリング(採掘調査)を開始したことが、くすぶっていた導火線に火を付けた。
「A国」や「B国」が、日本海において大規模着上陸訓練を複数回行うなど、戦争勃発の危機を煽(あお)り、日本政府に対し、譲歩を迫る中、ついに、「A国」もしくは「B国」が、日本海の石油資源の獲得および日本海の内海化を行うことを戦略目的として、新潟県への軍事的侵攻を開始した。陸上自衛隊(陸自)部隊は、新潟市の重要防護施設やインフラ施設に対して攻撃を企図する敵ゲリラ・コマンドゥ部隊に即応し、事態の拡大の抑制を行う。
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source : 文藝春秋 2019年9月号