一枚の名画をのぞき込んでみると……
✓見えてきたのは「おでこ」
ルネサンス時代のイタリア上流婦人たちは、このように生え際からさらに上まで前髪を剃り上げていた。なぜそんなめんどうなことをしたかといえば、人相占いで額の広い人は賢明だと太鼓判を押されていたから――というわけではない。額が広くなれば相対的に顔の下半分が小さく見え、幼女のような愛らしさを醸し出すことができるからだ。ついでにその広いおでこを宝石で飾れば、なにやら神々しくも感じられるだろう、との深謀遠慮。
恋人がマドンナ
『聖母子と二天使』
1460-1465年頃、テンペラ、95×62cm、ウフィツィ美術館 / 写真提供 Alamy Stock Photo/amanaimages
窓なのか額縁なのか、にわかには判定しがたい縦長の枠に雄大な風景がおさまり、その前で愛らしい聖母が両手を合わせて祈っている。伏し目がちなその瞳がこちらへ向けて見開かれれば、どんな男性でも平静ではいられないだろう。なんと魅力的なマリア!
彼女には幼子イエスが見えていないようだ。これから生まれてくるイエスを2人の天使が支え上げて聖母に、というよりこの絵を見ている我々に、披露しているのかもしれない。手前の天使が、いたずらっ子めいた笑顔をこちらへ向ける。
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source : 文藝春秋 2024年8月号