一枚の名画をのぞき込んでみると……
![](https://bunshun.ismcdn.jp/mwimgs/9/2/1600wm/img_92e763591be1f1d402e744f4426873e0586657.jpg)
✓見えてきたのは「日本の提灯」
「灯りを提げる」という意味の提灯は、竹ヒゴなどで組まれた丸い枠に和紙や絹などを張り、底にロウソクを立て付けて作る。今で言うところの照明器具であり、懐中電灯だ。中国由来だが、本家との違いは折りたためること。ロウソクのやさしい揺らめきによる幻想性が好まれ、電気時代の現代ですら祭や儀式の場で使われ続けている。燃えやすいという欠点があるが、だからといってロウソクの代わりに電球では風情に欠ける。
黄昏時の妖精
![](https://bunshun.ismcdn.jp/mwimgs/6/f/1600wm/img_6f2f5be4276e85136c35457549e102351085858.jpg)
『カーネーション、リリー、リリー、ローズ』
1885–1886年、油彩、174×153.7cm、テート・ブリテン / 写真提供 alamy/amanaimages
奇妙なこのタイトル(『カーネーション、リリー、リリー、ローズ』)は、当時のポピュラーソングから取られた。「花の女神フローラの冠は3種の花を編み上げたもの。カーネーション、リリー……」と、何度も繰り返す曲だったという(残念ながら今は聴く術がない)。
そのフローラの特別な花々が乱れ咲く初夏の宵、幼い少女たちが一心不乱に庭で提灯を吊るしている。
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source : 文藝春秋 2024年7月号