社会の柱がこのありさま

名画が語る西洋史 第142回

中野 京子 作家・ドイツ文学者
エンタメ アート 歴史

一枚の名画をのぞき込んでみると……

 

✓見えてきたのは「お寺のまんじ?」

ドイツ人は日本のお寺の「卍」(いわゆる左まんじ)にドキリとする由。ナチスの右まんじ、即ちハーケンクロイツ(=卐、鉤十字)と一瞬見間違えてしまうかららしい。では画中の人物がぴしっと締めているこのブルーネクタイの金色の模様は? もちろんハーケンクロイツだ。現代なら顰蹙を買うこのマークが、誇らしさのシンボルとしてドイツのいたるところで使われていた時代があった。これはその頃の絵画。

 


 

社会の柱がこのありさま

『社会の柱』

1926年、油彩、200×108cm、ベルリン・ナショナルギャラリー/写真提供 Bridgeman Images/amanaimages

『社会の柱』というタイトルは、イプセンの戯曲から取られた。このノルウェーの劇作家は資本家の偽善を告発したが、本作で糾弾される4本の「支柱」は、貴族、ジャーナリスト、政治家、宗教人だ。

 ナチス台頭の時代を生きたグロスは、このような極端にデフォルメした醜悪きわまりない人物像によって政治腐敗を描き、ナチスから退廃芸術の烙印を押された。しかし本人が自作を「トイレの落書きが手本」と言い放っているのだから、筋金入りだ。

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source : 文藝春秋 2024年6月号

genre : エンタメ アート 歴史