男嫌いの処女神

名画が語る西洋史 第139回

中野 京子 作家・ドイツ文学者
エンタメ アート

一枚の名画をのぞき込んでみると……

 

✓見えてきたのは「もしや独眼竜政宗?」

兜の前立てに三日月とくれば、すぐ思い出されるのが伊達政宗。月が満ちてゆくような大願成就を祈っての兜飾りだったという。彼の辞世の句もまた月に関連し、曰く、「曇りなき 心の月を 先立てて 浮世の闇を 照らしてぞ行く」。実に男らしい。さて、しかしこの絵の主は政宗ではなく、月の女神。絵画におけるアトリビュート(その人物をあらわす持ち物)として、ヘアバンドに三日月飾りが使われている。

 


 

男嫌いの処女神

『水浴のディアナ』

 

1742年、油彩、57×73cm、ルーヴル美術館 / 写真提供 alamy/amanaimages

 月の女神ディアナ(=アルテミス、ダイアナ)は太陽神アポロンの双子の姉。父親は主神ゼウス(=ユピテル、ジュピター)なので、神々の中のエリートたるオリンポス12神のひとりだ。

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source : 文藝春秋 2024年3月号

genre : エンタメ アート