妖精たちの一大イベント

名画が語る西洋史 第135回

中野 京子 作家・ドイツ文学者
エンタメ アート 歴史

一枚の名画をのぞき込んでみると……

 

小さな老妖精

頭頂部がきれいに禿げあがり、光を照り返している。鼻の下の髭と頰をおおう髯は真っ白だ。そしてその髯は両耳のところで細く長く炎の形に伸びあがり、小さな翼に見えなくもない。これを羽ばたかせ、この老妖精は飛翔できるのかもしれない。だが今は両手を膝に置き、ちょこんと座ったなり固まってしまったようだ。何を見ているのか、見ていないのか、目も寄っている。不安? 恐怖? それとも過度の期待?

 


 

妖精たちの一大イベント

『お伽の樵の入神の一撃』

1855–1864年、油彩、54×39.4cm、テート美術館 写真提供 alamy/amanaimages

 ヴィクトリア朝時代の新進画家ダッドは25歳の時、ヨーロッパ各地及び中東の取材旅行に出た。だが10カ月後、精神に変調をきたして帰国する。

 薬局を営んでいた富裕な父は(母はすでに死去)、子供たちの中で一番ダッドに期待しており、旅の疲れが取れれば回復するだろうと、さほど重大視していなかった。ダッドも父の前では病状を必死に隠していたらしい。そんなある日、父子で公園を散歩中、突如ダッドは、悪魔が父の皮をかぶっていることに気づく。

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source : 文藝春秋 2023年11月号

genre : エンタメ アート 歴史