名画をのぞき込んでみると…
籐製バスケット
これは籐製のバスケット。しかし中に入っているのは、こうしたバスケットに決して入れてはいけないはずの、生首。おだやかに眠っているように見えなくもないが、胴体から切り離されているのだから当然もう生きてはおらず、顔も土色だ。編み目からは血がしみ出ているし、底からは血腸(ちわた)がどろりと垂れて凄惨きわまりない。いったい彼はなぜこんな目にあったのか、マフィア絡みか、それとも妻か愛人による嫉妬殺人?
黒澤版ユーディト
漆黒の闇を背景に若い女性が二人。かすかな物音でも聞こえたのか、同時に振り返ったところだ。
凄まじい緊迫感。
一人は豪華な衣装に身をつつみ、重い長剣を軽々と肩にかついで、闇の向こうを鋭い三白眼で睨(ね)めつける。簡素な服のもう一人は、男の生首を入れた籐のバスケットを左腕と腰で支える。彼女らは身分こそ違えども一蓮托生の運命にあるのだ。
――これは旧約聖書外典の物語。古代ユダヤの町がアッシリア軍に包囲され、陥落寸前となった際、富裕な寡婦ユーディトが危機打開のため立ち上がる。侍女一人だけ伴って敵の野営地へ乗り込み、将軍ホロフェルネスに取り入ったのだ。
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source : 文藝春秋 2023年7月号