異形の島

名画が語る西洋史 第137回

中野 京子 作家・ドイツ文学者
エンタメ アート

一枚の名画をのぞき込んでみると……

 

死の影

フード付きの白装束をまとった死神が、目の前の寝棺(これまた白い布で覆われている)に、黒く禍々しい影を落としている。西洋の死神は中世以降、「生ける骸骨」として描かれてきた。最初はオールヌード(?)で、しかもおおぜいでぎくしゃく動きまわっていたが、次第に白衣ないし黒衣で全身を包むようになり、顔もフードで隠し、単独行動をとるにしたがって威厳を備えはじめた、このように。もしかするとハンサムかもしれません。

 


 

異形の島

『死の島』

1880年、油彩、110.9×156.4cm、バーゼル市立美術館 写真提供 Bridgeman Images/amanaimages

 水面から立ち上がる異形の島は、まるで巨人の太い腕が「死」そのものを抱きかかえているかのようだ。ごつごつした茶色い岩石や真っ黒な糸杉。人工的な壁や横に穿(うが)たれたいくつもの墓穴。それらの不思議な対比。

 今しも鏡のような水面を、月光に照らされながら一隻の小舟が寝棺を乗せて島に近づいてゆく。漕ぎ手が静かにオールを動かし、死神が立ったまま棺を見下ろす。

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source : 文藝春秋 2024年1月号

genre : エンタメ アート