煩悩は百八つだが……

名画が語る西洋史 第125回

中野 京子 作家・ドイツ文学者
エンタメ アート

名画をのぞき込んでみると…

 

お風呂あがり?
これは狭いワンルームマンションのお風呂からあがると、友人が入ってきたので「やあ」と手をあげて挨拶しているシーン? それとも磔刑にされたイエスが石棺から起き上がった復活のシーン? 難問(!)だが、正解は後者。証拠は、両の掌に打ち付けられた釘の跡と、ローマ兵に刺された右脇腹の傷。イエスを囲む大きな円は神の瞳になっていて、下部にはラテン文字で「心せよ、心せよ、神が見そなわし給う」と記されている。

 


 

煩悩は百八つだが……

 聖書に明確に記されているわけではないが、人間を罪に走らせる悪しき欲望として七つの大罪があることをキリスト教は教える。ネーデルラントの奇想の画家ボスが、それをトンド(円形画)形式で描いた。

 中心には虹彩と瞳。その瞳の中に復活後のイエスが立つ。描写は全体に漫画風で、当時の風俗もわかり、見て楽しい。

 イエスの真下が「憤怒」。居酒屋の前で男2人が刃物をもって対峙する。テーブルがひっくり返り、女が止めに入る。

 時計回りに、次は「嫉妬」。ネーデルラントの諺では「2匹の犬が1本の骨を奪い合う」という言い回しで嫉妬を表現したという。それを踏まえてか、骨も犬も登場している。

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source : 文藝春秋 2023年1月号

genre : エンタメ アート