スキャンダラスな肖像画

名画が語る西洋史 第126回

中野 京子 作家・ドイツ文学者
エンタメ アート

名画をのぞき込んでみると…

 

スズメバチ的ウエスト
豊かな胸とヒップをさらに強調するのは、ほっそりしたウエスト。現代女性の多くが、「こんなスタイルになれたらなあ」と溜息をつくに違いない。スズメバチも同じウエストを持つが、その進化の理由は、腰を自在に曲げて敵に毒針を刺すためだ。その代わり彼女らは(幼虫時代を除き)流動食しか受けつけない。何にでも代償があるというわけだ。人間の女性もこういうくびれを獲得するのに、どれほど涙ぐましい努力が必要なことだろう。

 


 

スキャンダラスな肖像画

 シャープな横顔、完璧なスタイル、真っ白な肌、真っ黒なドレス、耳だけがほんのり桜色で艶っぽい。

 彼女はフランスの銀行家の妻、ヴィルジニー・ゴートロー。美貌と浮名によって社交界で名を馳せていた。若きサージェントが拝み倒してモデルになってもらったという。お互いアメリカ人同士、通じるものがあったのだろうが、それが裏目に出たのかもしれない。

 完成作は酷評に次ぐ酷評。大スキャンダルに発展し、ヴィルジニーの母親が娘の名誉にかかわると怒鳴り込んできた。手直ししても、絵は購入してもらえず、嫌気がさしたサージェントはパリを去ってロンドンへ移住。そこから大人気肖像画家になったのは周知のとおり。

 さて、いったいこの肖像画のどこが問題だったのか?

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source : 文藝春秋 2023年2月号

genre : エンタメ アート