「トリコロールの宮市亮再びピッチで輝け 待ってるぞ」
あの日、あの横断幕を見ていなかったら、僕は引退していたかもしれない――。
2024年4月、自身のサッカー人生を振り返った拙著『それでも前を向く』が、「サッカー本大賞2024」の大賞と読者賞をいただいた。吉報を聞いたときは驚いたが、多くの方に読んでいただけたことを素直に嬉しく感じている。
「本人が実際にこの文章を書き切っている」。選考委員からはそんな講評があった。記者やライターがインタビューをもとに構成するアスリートの本も多いなか、本書は僕自身が筆を執って書いたものだ。今回の受賞では、こうした背景も評価されたようだ……と、格好つけて言ってみたが、最初から「自分で書きたい」と言い出して刊行が実現したわけではない。
出版が決まったのは4、5年前のこと。「宮市亮で本を出しませんか」と出版社に提案したのは、10年来の付き合いであるマネージャーの舩川さん。ライターを立てずに企画だけ売り込んだ結果、まずは本を出すことだけが決定した。その後、舩川さんから「書ける?」と連絡があり、無茶ぶりに近い形で自分で書くことになったのだ。
普段の僕は、思ったことをスマートフォンのメモに書き留める程度で、長い文章は書いたことがなかった。読書家でもなく、愛読書は『スラムダンク』。書き始めてすぐに壁にぶつかった。同じ言い回しが続き、書き換えようにも類語が思い浮かばない。現役選手としてプレーする傍ら文章を書き、お世話になっている記者の方に、それを添削してもらう日々が続いた。昨年、長い時間をかけて、なんとか書き終えた。
思わぬ形ではあったが、自分で1冊の本を書きあげたことは、改めて自分の選手人生に向き合ういい機会になった。
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source : 文藝春秋 2024年9月号