昭和43(1968)年から『週刊少年マガジン』などで人気を博した漫画『タイガーマスク』。新日本プロレスで、「実物のタイガーマスク」として活躍した男が佐山聡(さとる、1957〜)だ。その功績はプロレスに限らず、後に隆盛する総合格闘技(MMA)の礎を築いたことにもある。佐山の足跡を『1984年のUWF』の著者・柳澤健氏が辿る。
アントニオ猪木が率いる新日本プロレスに17歳で入門した佐山聡は、小柄だが抜群の運動神経の持ち主だった。「プロレスこそ最強の格闘技」と信じていたが、8カ月ほど経って驚くべき事実を知らされる。
プロレスの結末はあらかじめ決められている。お互いの協力があって初めて成り立つショーだ。
幼い頃から愛し続けたプロレスの真の姿を知って衝撃を受けた。
普通の人間ならば諦めてリング上でショーを演じ続けるか、絶望して去るかのどちらかだ。
だが、佐山聡は第三の道を選んだ。現在のプロレスがショーであるならば、真剣勝負のプロレスを自分が作りだそう、と心に決めたのだ。
すでに高校でレスリングを、新日本プロレスの道場では関節技を学んでいた。
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