冒険家の植村直己(1941〜1984)は、五大陸最高峰への登頂や犬ぞり単独行での北極点到達など世界初の偉業を数多く達成した。北米マッキンリーへ世界初の冬期単独登頂に成功した翌日に消息を絶つまでどれほど不便な極地からでも妻の公子さんには絶えず便りが届いた。
もう金婚式ですか。考えたことなかったわ(笑)。直己がいなくなって、40年なんですね。結婚生活は昭和49(1974)年から59年までの10年でしたけど、その間も北極圏やエベレストや南極へ出かけていましたから、一緒にいた時間は半分くらい。お正月を過ごしたのは一度だけ。その分、2人とも夢中で暮らしました。
手紙は、結婚前からたくさん書いてくれました。厚手の画用紙を切った手製の葉書にスケッチがついていたり、封書だったり。
新婚7カ月目からグリーンランド、カナダ、アラスカへ1万2000キロの犬ぞりの旅に出かけ、1年半も帰って来ませんでした。でも手紙は欠かさず、日付を見ると1日おきのときや、日に2回も書いてくれたこともありました。こちらから返事を出すとよほど嬉しかったようで、返信にこう書いてきました。
〈第1便、何回読んでも読みあきない。この手紙を書く前も3回も読み、もう10回以上読んだ。寝る前もベッドで3〜4回読んでねる〉(昭和49年12月5日。『植村直己 妻への手紙』より。以下同)
可笑しかったのは、私が返事をサボっていたら焦れてしまって、手書きの宛名のラベルを8枚も送ってきたことです。封筒にそのまま貼って、返事をくれというわけです。
文面には、身体の弱い私を気遣う言葉が、必ず添えられていました。
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