陛下はお酒、雅子さまは生き物が大好き。ご出産秘話から御所の中の私生活まで……新天皇・皇后おふたりに接した人々が素顔を明かす。
天皇陛下の山登りを初めて取材したのは、週刊誌「女性自身」の皇室担当になってすぐのことでした。私は山登りが得意なので、陛下の健脚にもついていけるだろうと皇室担当を任されたのです。
約35年前、昭和の時代はまだ取材陣との距離感が近かったと思います。山頂に着くと「いい景色ですね」とお声をかけていただいたり、私も「そんなに撮影したらフィルムが足りなくなりますよ」と話しかけました。山頂で陛下を囲んで記念撮影するのも恒例でした。
ご結婚後は、雅子さまも山にご一緒されるようになりました。お揃いのウエストポーチに新婚のご夫婦らしい初々しさを感じたものです。「雅子さまは山登りが好きじゃないだろう」と邪推する人もいましたが、陛下といくつも高い山に登り、「なかなかの健脚だ」と評判でした。
ご結婚からしばらくすると、編集部で「おふたりが手をつないだ写真がない!」と話題になりました。上皇ご夫妻がよく手をつながれるのとは対照的です。「よし、山なら手をとる瞬間があるはずだ」とカメラマン魂に火がつき、足元の悪い場所などで何度も狙ったのに結局1枚も撮れませんでした。陛下はとても奥さん思いですけれど、人前で手をつなぐのは照れ臭いのかもしれません。
“新婚旅行”となった中東訪問やベルギー訪問など、海外にもよく同行させてもらいました(カラーグラビア参照)。ファインダー越しに見るおふたりは、実にイキイキとされています。とくに雅子さまは王族や要人とも自然体で話され、さすがは元外交官だと感心することがしばしばありました。
長年撮影してきた身としては、日本を離れたときぐらい、もっと自由に振る舞われていいと思います。両陛下が笑顔の写真をたくさん見られると、私たち国民もうれしくなり、安心できるはずです。
天皇と一緒に登山する筆者(右)
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source : 文藝春秋 2019年11月号