3日3晩、「高殿」に籠り燃やし続ける
※グラビア「奥出雲に残るたたらの炎」もぜひご覧ください
炎の中で、男たちが戯れているようだ――。
初めてたたら製鉄を目の当たりにした時、とてもワクワクしたことを覚えています。40年ほど前、私はまだ高校生でした。燃えさかる炎の中に砂鉄が投入される様子がテレビに映し出され、「火入れ式が行われました」というニュースが流れました。地元・奥出雲でこれほど凄い伝統技術が継承されているのかと圧倒されたのです。「自分が継承してやろうじゃないか」と心に決め、この世界に飛び込みました。
たたら製鉄は日本の古代から近世にかけて発展した製鉄法で、炉内に空気を送るふいごを「たたら」と呼んだことが語源と言われます。
「釜」と呼ばれる粘土で成形した炉の中に、1回の操業で砂鉄と木炭それぞれ合計10トンを超える量を少しずつ交互に投入します。これを3日3晩続け、最後に釜を崩すと、2.5トンの鉄の塊「鉧(けら)」が現れます。この鉧が日本刀の材料となるのです。

鉧は破砕し、炭素量に応じて8種類の等級ごとに分類しますが、最も上質なものが「玉鋼(たまはがね)」です。現在においても、これを作ることができるのは、たたら製鉄のみです。玉鋼は不純物の少ない良質な砂鉄を吟味し、使用することが重要であり、純度が高く、丈夫で錆びにくい。最大の特徴は「肌」です。最先端の溶鋼炉で作る均一な鋼とは異なり、一つひとつ色味が違って個性がある。現代の日本刀は武器というよりも美術品であり、玉鋼の風合いが日本刀の美しい刃紋を生み出すのです。
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