「姿」「地鉄(じがね)」「刃文(はもん)」──美が凝縮された3つのポイント
東京国立博物館で12月11日まで開催中の特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」では、当館所蔵の国宝89件を公開しています(会期中展示替えあり)。刀剣も全展示期間を通して19件が並び、それらを一堂に展観できるというのは初めてのこと。私自身もすべてを並べて観たことはこれまでになく、何とも希少な機会と実感しています。
2022年現在、国宝に指定されている刀剣は全国に122件。ここではそのうち2割弱を目にすることができるわけです。
そのなかには「天下五剣」として別格の評価を受けるものも含まれます。《太刀 銘 三条(名物 三日月宗近(みかづきむねちか))》と《太刀 銘 安綱(名物 童子切安綱(どうじぎりやすつな))》です。それぞれの作り手である京都の宗近と伯耆(ほうき)(鳥取)の安綱は、ともに平安時代の名工。両者の作風の違いをじっくり見比べたいところです。
ほかに《太刀 銘 備前国包平(かねひら)作(名物 大包平)》《短刀 銘 吉光(名物 厚藤四郎(あつしとうしろう))》といった古来「名物」と呼ばれた名刀も鑑賞できます。
これだけの名作が出そろうので、今回は刀剣専用の展示室を特別に用意しました。同じ空間に主役級の刀剣が居並ぶさまは壮観そのものですよ。展示ケースもクリアな最新のものを用意し、細部まで堪能できる環境を整えています。余分なものを排除するよう室内は暗くして、そのぶん刀剣の輝きがわかるようにライティングにもこだわりました。
日頃、刀剣は当館の総合文化展(平常展)でも展示していますが、ただ通常ですと国宝は1〜2件を展示するくらい。およそ4〜5年かけて国宝すべてをローテーションさせていくので、今回のような規模は滅多にあるものではありません。
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source : 文藝春秋 2022年12月号