羽生九段の棋戦優勝、回数が多いのは……
そして羽生の45回の内訳は以下の通りだ。
朝日杯将棋オープン戦、12回(前身棋戦の全日本プロ将棋トーナメント及び朝日オープン将棋選手権 を含む)
NHK杯テレビ将棋トーナメント、11回
銀河戦、5回
将棋日本シリーズ、5回
新人王戦、1回
オールスター勝ち抜き戦、4回
早指し将棋選手権、3回
天王戦、2回
若獅子戦、2回
上記のうち、オールスター勝ち抜き戦以下の4棋戦は、現在行われていない。現行棋戦で羽生が優勝していないのは、参加資格がない若手棋戦の加古川青流戦と上州YAMADAチャレンジ杯を除くと、第3期よりタイトル戦に昇格した叡王戦だけだ。
そして羽生が1期以上参加して優勝経験がないのは名将戦、早指し新鋭戦、大和証券杯ネット将棋最強戦という3つの終了棋戦である。さすがの羽生と言えども、棋戦優勝コンプリートは無理だったが、上記の3棋戦で最多参加数は大和証券杯の6回であるので、これは致し方ない(とはいえ、天王戦では6回の参加で2回の優勝を果たしているのだが)。
「史上最強棋士は誰だ?」論争に新たな材料
一発勝負のトーナメントという意味では、やはりNHK杯の11回優勝が出色だろう(朝日杯の12回は、朝日オープン将棋選手権時代に番勝負の防衛戦が3回あった)。しかもその中には第58~61回の4連覇が含まれる。トーナメント棋戦の4連覇も不滅の記録と言ってよい。現在継続中の一般棋戦連覇記録は、藤井七段が朝日杯で達成した2連覇があるのみだ。次世代の最強棋士候補は、この連覇記録を超えられるかどうか。
将棋ファンにとって永遠のテーマともいえる「史上最強棋士は誰だ?」を語る上で、羽生の45回目の優勝は、また新たな材料を提供したともいえる。要するに「大山と羽生はどっちが上?」という点についてだ(他の棋士を史上最強と考える方々からはお叱りを受けそうだが)。
ハッキリ言ってしまえば、時代やそれにともなう環境が違い過ぎて、比較自体が無理である。大山最強派の主張を想像すると「今と同じだけ棋戦の数があれば、タイトル獲得数も優勝回数も、もっと増えていることは絶対に間違いない」となるだろうし、対して羽生最強派は「昔は参加棋士が少なかったから、現在の優勝のほうが価値が高い」(第1~15回のNHK杯は参加棋士が8名だった)と主張することもできる。推論としてはどちらも間違ったことを言っているわけではない。
決着がつかないからこその永遠のテーマであり、無理に結論付けようとするのは無粋と思うのだが、いかがだろうか。