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――「メンズ」と「LGBTQ」という言葉には、どういった違いがあるのでしょうか。

下山田 「メンズ」も「LGBTQ」も“枠”である、という意味では同じだと思いますね。

 性的指向や性自認も、かっちり決まったものではなく、グラデーションや流動性があるよね、と言われてきています。性自認で言えば、Xジェンダー(注3)や、ジェンダー・フルイド(注4)を自認する人も増えていますし。でも、当事者ではない人に「自分が何者か」を伝えるためには、やっぱり“枠”や“箱”があるとすごくラクなんですよ。

注3……性自認が男性・女性のいずれでもない人のこと
注4……性自認が一定せず、流動する人のこと

 

「メンズ」は女子サッカー界でのみ通じる“枠”だとすれば、「レズビアン」「トランスジェンダー」は全国区にバーンと意味が通じる“枠”、というイメージですかね。

――下山田さんの場合は、自身のセクシャリティをどう説明していますか。

下山田 自分の場合は、「メンズ」を名乗るのはしっくりくるんだけど、「レズビアン」を名乗るのは違和感があって。だから、女子サッカー界の外では「セクシャリティはわからないです」と前置きした上で、彼女がいるという事実があり、女性らしく見られることがあまり好きではない、といったことを一つ一つ言語化しています。

ドイツで「カミングアウトしたい」という気持ちが爆発した

――カミングアウトしたタイミングにも、何か背景があったのでしょうか。

下山田 今年の5月まで、約2年、サッカーのドイツ女子2部リーグのSVメッペンでプロ選手としてプレーしていたのですが、その影響が大きいです。

 ドイツでは、LGBTQの権利が法律でちゃんと守られているし、同性婚も認められている状況。そんな社会に飛び込んでみたら、とにかく生きやすかったんです。

 

――日常生活でも、日本との差は感じましたか。

下山田 結構感じました。ちょっとした会話でも、意識の差がすごくあらわれますね。

 たとえば「彼氏いるの?」って質問って、答え方の選択肢が、彼氏がいるか・いないかしかないじゃないですか。向こうでは、「誰と付き合っているの?」とか、もっといろいろな答え方ができる質問がデフォルトです。

「どんなタイプが好きなの?」と聞かれて、女性的な特徴を挙げたとしても、「へー」で終わります。日本だと、「えっ、それってどういうこと」ってツッコミが始まると思うんですけど。

――たしかに、日本の現状とはだいぶ差があるように思います。

下山田 ドイツでは、LGBTQの存在がすでに当たり前なんですよね。向こうでの生活を経験してからは、自分を隠して苦しい思いをするくらいなら、オープンにしてありのままで生きたいなという気持ちがすごく出てきて。ちょうど、それが爆発したタイミングでした。