リプライは「時々炎上しちゃってるから見ないです」
――舛添さんは政界を退いた後、現在もツイッターを利用して発信を続けていますけれども、リプライなどの色々な反応をご覧になっていますか?
舛添 いや、それを読んでいると時間がなくなるので見ないですね。時々炎上しちゃってるから(笑)。
――「来てるな」くらいで、すべてに目を通しているわけではないですか。
舛添 それよりも、正しく新しい情報をツイートしたほうがいいかなと思っています。
――文化人として多数のメディアに登場されていた時期、かなり多忙だったなかでネットを活用して、ずいぶん助けられてきたそうですね。
舛添 ある意味、長らくネットを活用していると、ネットの変化というんですかね。以前より大勢の人が利用して、すぐ炎上しやすくなっていると感じます。どういう風な使い方をしていけばいいのか、そろそろ考え直さないといけない。
ネットとリアルの中間をもっと活用できないかと思うんですよ。もう亡くなった山形の政治家、加藤紘一さん。森(喜朗)さんを追い落とそうとした加藤の乱は、なぜ失敗したのか。やはり彼がネットやメールを「信じすぎた」からですよね。
ものすごい数の「あなただけが頼りで、日本の救世主です。戦ってください。悪いやつをやっつけてください」というメッセージが来る。それを見て、「これだけの人が、日本中から俺を支持しているんだ」と反乱に踏み切った。ところが、その後に加藤さんが「失敗したけれども、ここまで支えてくれた全国の支援者の方々へご挨拶に参りたい」ということで、コンタクトを取ろうとしても、なかなか難しかったようです。人を集めて加藤さんの話を聞こうと実際に行動するようなタイプの人たちではなかったのでしょう。
ネットをやらない、肉声じゃないと信じない政治家
――今、森喜朗さんのお話が出ましたが、森さんという政治家はどういうタイプの人なんでしょうか。
舛添 加藤さんとは全く対照的で、そういうインターネットのようなものを全くやらない。電話だけです。肉声じゃないと信じない。ある人をつかまえてよく言っていたのは、「お前、地元の県会議員や市会議員と何回飯食ったのか」「そんなことでちゃんと政治家をやれると思うのか」と。
つまり、森さん的感性では、こうして会って一緒に酒を飲んで飯を食って、それでやっと政治が動くんだと。ある意味で非常に正しいんですよ。膝をつき合わせて話をすれば印象に残りますが、ちょっと名刺交換したくらいでは忘れてしまいますから。
――舛添さんの中で「ネットとリアルの中間」というのは、どんなイメージですか?
舛添 今これだけネットが活用できるようになった時代に、両方のいい所取りができないかなというのが、政治家稼業をしていた立場からの意見なんです。しょっちゅう忘年会、新年会でお酌して回って何次会。選挙区が小選挙区に決まっていれば、そうした会合からは逃げられないわけですよ。
しかし今の時代、ネットを活用することによって、有権者と政策についての議論がうまくできて、それが政治活動につながるような仕組みを考えるべきですよね。せいぜい「何時にどこで演説しますから来てください」とか「今日はこんな様子でした」と動画を流すくらいはみんなやっているけれども、ヒューマンコンタクトに代わることをネットでやれるか。ここに懸かっていると思いますね。
写真=佐藤亘/文藝春秋