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一番影響を受けているのは、過去の自分の作品

――そして、今年の『スタフ』に繋がるという。振り返ってみて、ターニングポイントというのはありますか。

道尾 今こうしてずっとお話しさせていただきながら気づいたんですけれど、1冊1冊がターニングポイントになっているんですよね。前の1冊がこうだったから次はこう、という。「影響を受けた作家は誰ですか」とよく聞かれますが、都築さんをはじめとしていっぱいいますけれど、やっぱり一番影響を受けているのは、過去の自分の作品ですよね。それに気づきました。

――今思い出したんですけれど、以前、作品の題名に動物が出てくるから<干支>シリーズって言われていましたね。猿、犬、ネズミ、鳥、龍、蛇。「『鬼の跫音』の鬼は牛の角と虎のパンツをはいているからふたつクリア」とか「猪はどうするんだろう」なんて言っていた記憶が。

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道尾 あれは僕が言いだしたんじゃないですよ。『片眼の猿』の時に「これは<干支>シリーズじゃないですかね」なんて編集者に冗談で言われて、それがスプリングボードになって、そういえば犬のアイデアもあるなということで『ソロモンの犬』を書いたんです。最近では、『貘の檻』の貘っていろんな動物が混じっていて、身体のどこかが兎なんですよ、だから兎もクリアなんて言ってます(笑)。

――あ、<干支>シリーズ、続いていたんですか(笑)。

道尾 こじつけですよ(笑)。それがスプリングボードになればいいけれど、縛られても面白くないので特に気にしていません。

瀧井朝世

――ところで、最近は1年に1冊ペースにしているんですか。

道尾 これまで年によっては1年に3冊単行本を出しちゃったりして、ちょっと多すぎかなというのはあったんですよ。とにかく書きたいことが多いし、この編集者とも、あの編集者とも一緒に仕事がしたい、というのもあるしで、必然的に冊数が増えていたんです。今は少しペースを落としています。でも、すでに出来上がっている長篇があったりもするんですけどね。だから1年間に書く原稿の量がガクッと減ったわけではないです。少なくはなっているけれど、たぶんそれは、文章の密度が上がってくれているんだと思う。

――現在進行中、そして今後の作品について教えてください。

道尾 今は毎日新聞で『満月の泥枕』を連載中です。東京下町の、ものすごいボロアパートに住んでいる、金はないけど人情のある人たちが、大きなお祭りに絡んで「ある作戦」を立てて、とんでもないことをしでかす。というのが前半で、後半は殺人事件が絡みつつ謎に包まれた展開になっていきます。今プロットを考えているのは、以前に朝日新聞で書いた「口笛鳥」の中篇の第2話。これは『ノエル』みたいに、中篇3つで大きな話を作って1冊にする予定です。

――この先のことをイメージしたり、目標を設定したりしていますか。それとも、目の前のことに集中するタイプですか。

道尾 目の前のことですね。もちろん大きな目標として、今ついてきてくれている読者に楽しみ続けてもらうことと、読んだことがないという人に読んでもらいたいな、というのはあります。今、読書人口が減っていると言われるなかで、こっちもいろいろ発信していかないといけないなと思っていて。それでオフィシャルサイトを作って、自分へのオススメ作品が分かるチャートを作ったり、ツイッターで掲載情報や新刊情報を発信したりしています。