3月19日にフジテレビ系列で放送されるスペシャルドラマ『炎の経営者』は、戦時中に大阪で生まれた小さな化学工場を世界トップクラスの化学メーカーにまで成長させた企業経営者の実話をもとに作られている。原作は、「日本触媒化学工業(現・日本触媒)」の実質的創業者・八谷(やたがい)泰造氏の生涯を描いた高杉良氏の同名小説。ドラマでは「谷田部(やたべ)泰三」として、伊原剛志さんが演じる。
「谷田部は、日本の化学工業発展のため、自社技術、純国産技術にこだわり続けた男です。とにかく思いが強くて熱い。その思いが周囲をも巻き込み、突き動かしていきます」
決意は社名にも表れている。「触媒」とは、自らは変化しないが、他の物質の反応を促進、抑制させる物質のこと。例えば洗濯用洗剤に含まれる酵素は、皮脂汚れの成分であるタンパク質を分解し、洗い流しやすくする。酵素が触媒となっているのだ。酸化チタンは、光が当たると消臭や空気浄化物質を発生させる触媒。日本触媒は紙おむつの高吸水性樹脂で世界トップシェアを誇り、他にもペットボトルや衣料用洗剤等の原材料を生産している。それこそが触媒技術の賜物であり、その研究開発は、新たな化学製品を生むことにもなるのだ。
「生活に直接かかわりがない話のようですが、無くてはならないものですよね。谷田部はその未来を見据えていたんだと思います。純国産技術に徹底してこだわったのは、当時、技術は外国から買うのが常識の中、彼は工学博士でもある研究者の視点で、自分がやる、という強い思いがあったからではないでしょうか」
それが「炎の経営者」と呼ばれる所以だ。そしてときに、大胆な行動力をも見せている。
「会社が資金不足になったとき、面識がない財界の大人物に援助を乞おうと直談判に行く場面は印象的でした。谷田部は自社の事業を熱く売り込みながらも人間臭さを隠しません。その憎めない人柄に、皆、心を動かされたんです」
町の工場からスタートした同社は、事業所を増やし、やがて、川崎に巨大プラントの建設も成功させた。
「日本触媒さんの全面的な協力で川崎製造所でも撮影させていただきました。普段は許可が下りないところだけに、安全教習も受け、撮影機材も全てチェックを通したものを持ち込みました。指定場所以外での飲み物の持ち込みは禁止。もちろんタバコなんか絶対ダメ(笑)。でも、おかげさまで本物の迫力の中で演じることができました。今回、広報の方が触媒の世界を活き活きと語られましてね。ガラス管の中で化学反応を起こした物質が、光にかざすとキラキラして美しいのだそうです。谷田部もガラス管の中の世界に魅せられた1人で、きっとそこから大きな夢を見たんです。その夢を実現させた男の一代記を、是非ご覧ください」
いはらつよし/1963年生まれ。83年舞台『真夜中のパーティ』で俳優デビュー。96年NHK連続テレビ小説『ふたりっ子』、2006年映画『硫黄島からの手紙』など出演作多数。昨年、桂雀々に弟子入りし「雀々や剛々」として落語家デビューも果たしている。今作はフジテレビ初主演作品となる。
スペシャルドラマ『炎の経営者』
3月19日(日)16時~17時25分 フジテレビ系列で放送
http://www.fujitv.co.jp/keieisha/