文春オンライン

118階ビルの受付で取材班全員の顔写真を撮影……テック都市・深圳で見た日本との“共通点”

AI超大国となった中国で実感した、これからの自由のあり方

2019/12/24
note

 それら深圳でのAI関係の科学者、起業家、テック・ベンチャーなどの取材は、テクノロジーのジャーナリズム・メディア『WIRED』のウェブ版『WIRED.jp』で1年3ヶ月に渡って連載したAIを巡るノンフィクション「動物と機械からはなれて」のためのもの。この連載に大幅に加筆修正したものが、12月24日に『動物と機械から離れて』(新潮社)と改題されて発売となった。この連載ならびに本のために、わたしたちは深圳、シリコンヴァレー、モスクワ、ニューヨーク、ソウル、京都そして東京で合計51名ものAIに関わる科学者、起業家、脳科学者、法学者、哲学者、数学者、類人猿学者を取材した。AIに関する本は雨後の筍の如く出版されているが、AIに関してこれだけの人数を取材した本は、世界的にも類を見ないのではと思う。

動物と機械から離れて

深圳の人々のAIへの圧倒的な楽観主義

 世界各地で第一線のAI関係者の話を伺ったのだが、中でも深圳の人々のAIへの圧倒的な楽観主義が印象深かった。彼らはAIがユートピアな世界を作り出すことを信じている。その楽観を支えるのが、今の中国、なかでも深圳の人類史上例を見ない発展ぶりだ。中国初の経済特別区に指定され、市が「大衆創業、万衆創新(大衆による起業、万人によるイノヴェイション)」というスローガンを掲げ、廉価な商品を中心とした下請け的労働集約産業からハイテク産業への大胆な転換を図る。

深圳の夜景。 ©菅付雅信

ADVERTISEMENT

 それを機にアジア最大の時価総額を誇る巨大インターネット企業のテンセント(Tencent、騰訊控股)、ドローンの世界シェア7割を占めるDJI(大疆創新科技)、米中の経済対立の象徴となっている大型家電メーカーのファーウェイ(Huawei、華為技術)、最先端バイオ企業のBGI(華大基因)などの本社が集結する、世界最大のテック都市が誕生した。今や「深圳ドリーム」という言葉があるほど、中国全土から若い才能が集結する街になった深圳の科学者たちは、世界のどの街の科学者よりも、未来への肯定感に溢れていた。