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AIによる豊かさと、徹底的な管理社会の実現

 中国最大の検索エンジン・サーヴィスを提供するバイドゥ(Baidu、百度)の副社長であり工学博士でもあるハイフェン・ウァン(王海峰)は、なんと80万人ものエンジニアを抱えるバイドゥの技術部門のトップ。彼は私たちの取材でこう答える。

「AIはわたしたちの生活をより美しく、スマートにするでしょう。個人的には、子供の頃に夢見た『鉄腕アトム』のような、人間に役立つ機械を作るために努力し続けたわけですので、AIが人々の生活の向上に役立てることに、とても幸せを感じています」

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 しかし、中国ではアメリカのプラットフォーマーのサービス――グーグル、フェイスブック、ツイッター、インスタグラムなど――は中国当局による外部ネットの遮断=通称「デジタル万里の長城」のせいで一切使えない。また海外からのニュースや情報も、当局によるAIを活用した検索と遮断で、反政府的なニュースは一切入ってこない仕組みになっている。中国国内のメールのやり取りも、中国本土に設置されたサーバーを通した使用しか許可されてなく、そのサーバーは当局の監視下にある。AIの活用による豊かさの実現と、AIによる徹底的な管理社会の実現が同時に起きているのが今の中国だ。

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日本を含む先進国全体で起きようとしていること

 AIの発展が中国の人々を豊かにしたかもしれないが、一方でAIの過剰な使われ方が中国の人々を人間らしく扱うのではなく、動物的または機械的な存在に貶めているのではないか。そしてそれは単に中国だけの特殊事情ではなく、日本を含む先進国全体で起きようとしていることなのではないか。そのような疑問への答えを探すべく、世界を旅した記録が本書になる。AIの時代における自由とは何か? 安易なAIユートピア論でもなく、煽るようなAIディストピア論でもない、第三の道はあるのか? 日本に生きる者として、日本人ならではの、経済的に中流で、地政学的に中立で、精神的に中庸を良しとする立場で、どちらかの極論におもねることなく、AIによって激変する社会と、これからの自由のあり方を全力で探してみた。この本に何らかの希望を感じてもらえればと思う。

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