グーグル、フェイスブック、ツイッター、インスタグラムを一切使えない中国で、テック都市として急発展を遂げる深圳。街のいたる所にカメラがあり、顔認証が唯一の信用となりつつあるこの街の人々は、なぜ「AIへの圧倒的な楽観主義」を持つのか。『動物と機械から離れて』(新潮社)の著者、編集者の菅付雅信さんが現地取材で見た、日本を含む先進国でも起ころうとしていることとは。

深圳の世界最大の電気街「華強北路」の様子。秋葉原の4倍の規模。 ©菅付雅信

高度な顔認識技術 カメラが人々の行動を追いかける

 中国のシリコンヴァレーと呼ばれるテック都市、深圳。30年前にはわずか40万人の村だったこの街は、今や人口は1400万人を超え、高層ビルの乱立具合では、東京をはるかにしのぎ、このままではニューヨークをあっという間に越すだろうと思われる急発展ぶりだ。

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 その深圳で最も高層なビル「平安国際金融中心」を取材で訪れた時のこと。この118階にもなる巨大なビルの受付を訪れると、既に広報の女性が私たち取材班を待ち構えており、受付に備えてあるカメラで全員の顔写真を自動的に撮影され、取材規約に署名して、中に通された。その後は広報の女性に案内されるとはいえ、ビルの至る所に設置されたカメラに顔を向けるだけで、ゲートが開き、エレベーターも目的階のボタンを押すことなく目的階に止まり、社長室もドアのボタンを押すことなく、ドアが自動的に開く。すべては高度な顔認識技術がなせる技で、カメラが人々の行動を追いかけ、認識し、個々に合わせた導線で先回りしてドアが開き、エレベーターが止まる仕組みになっている。

©iStock.com