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「やったもん勝ち」ネット業界のイノベーションが世間を犯罪まみれにするまで

最先端技術を駆使した「泥棒市」に見るマネーゲームの異様

2017/05/04
note

ネットオークションの利便性と「盗品捌きの泥棒市」

 このような問題のある出品が乱立することは、そもそもがネット業界を取り巻く法的枠組みが弛みまくっている証拠じゃないかと思うわけです。本当にこの方面が有望なのであれば、銀行がバックにいる消費者金融はとっくに参入しているはずなんですよ。それでもやらないというのは、消費者トラブルになったときに企業イメージやブランド的に取り返しのつかないダメージを負うことになるうえ、金融庁から具体的な指導があったら営業を止められかねない危惧があるからなのです。実際、今回のインターネット上での適法性の疑わしい出品に関しては、問題を認識している金融当局が介入することが予想されるばかりか、日本維新の会の丸山穂高議員が国会で麻生太郎財務相に質問までしてしまって、一般的にはリーガル大敗北事例だろうとも思うわけです。

インターネットオークションで不正販売されたトラのはく製(右、中央)と毛皮(左)(東京・警視庁牛込署) ©時事通信社

 メルカリに限らず、インターネット上でのサービスは多かれ少なかれ一定の匿名性が担保されていて、簡単な登録さえできればすぐに出品したり落札できたりする利便性が消費者にウケて伸びている側面はあります。しかしながら、簡便な登録で売買ができるということは、業者側はその出品者や落札者が誰なのか事件にでもならない限り把握しなくて済む一方、犯罪で収益を上げようとする側はその品物がどのような経緯で誰から得たものか表明せずに売買が完結するという格好の盗品捌きの泥棒市に化けてしまうことにもなります。

ポイント決済システムがマネーロンダリングの温床になりかねない

 ネットオークションで現金出品が横行する理由は先に述べたように、金に詰まった貧困者が消費者金融の大回転(複数の消費者金融の金利ゼロサービスを使いながら借り替えて回すこと)もできなくなって、しまいにはメルカリへの支払いをカードにすることで事実上のカードローンの現金化までできるようになります。そればかりか、マネーロンダリングの疑いを持たれかねない取引も出てきかねません。

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 というのは、メルカリは出品者の落札収入が口座に振り込まれることなしに、そのままメルカリ内で使うことができるのです。なので、その売上金を使って現金を落札すれば、本人特定が容易な銀行口座などを紐づけることなしに盗品その他を売り捌いて得た売上金を現金に換えることができるわけです。これらのビジネスがマネーロンダリングになりかねないという指摘はかねてからあるわけですけれども、手口情報がここまであからさまになって、金融庁も消費者庁も警察庁もこの問題を認識し、国会でも質問が出るぐらいの話になっていることは、事業者自身ももう少し状況をよく認識していくべきだと思うわけであります。

「やったもん勝ち」になることもあり得る、この状況

 そのメルカリも、時価総額1000億円を超える未上場ベンチャー企業として著名になる一方、そもそもユーザーの預かり金の管理を行うのに必要な資金移動業者としての登録をしないなど、課題も多く抱えていました。さすがに犯罪行為を助長するようなサービスが時価総額が大きいからと言って上場させられるような真似が起きると、東芝よりもひどい状況になるんじゃないかと思うんですけどね。

 それもあって、類似のビジネスをしているところでは、早くも売り逃げの話が出てきました。それはいつか来たソーシャルゲーム会社や、キュレーションメディア、バズ系ニュースサイトの高値売却事案と同様に、やったもん勝ちの状況になることもあり得るわけですよ。そのうちグラビアアイドルをトロフィーワイフにしてシンガポールに逃亡するのと同様の事例が、いくつも起きるようだと真面目に事業に取り組んでいる企業ばかりが馬鹿を見ることになりかねないのが気になりますね。

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