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新型肺炎 上海在住24年の日本人医師が訴える「中国の決定的な弱点」とは

2020/01/27
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「日本のショッピングモールは中国の五つ星ホテル以上にキレイだ」

藤田 それに加えて中国社会の衛生観念という問題があります。私はずっと前から言い続けているのですが、手鼻、タン吐き、立ち小便、手洗い、トイレの清潔さなどで中国はまだまだ不衛生なことが多い。もちろん昔と比べればだいぶマシになりましたが、それでも日本と比べれば大きな差があります。私の妻は中国人ですが、日本のショッピングモールに買い物に行くと、「中国の五つ星ホテル以上にキレイだ」とびっくりしています。

――2017年には習近平総書記がきれいな公衆トイレを整備するよう指示する、いわゆるトイレ革命もありました。ある日本メディアでは「民草のために心を砕く、優しい指導者を演出するための宣伝工作」と分析していました。

藤田 衛生観念の向上は中国社会にとって重要な課題です。摩天楼が建ち並ぶ近代的な街並みになっても、そこに住む人々の意識を変えなければ意味がありません。私が中国で暮らしだしてから、何度も感染病の流行がありましたし、妻にはかつてのコレラや肝炎流行の記憶もあります。空気感染する結核もまたしかりです。中国伝統医学が発展したのも、実はこうした伝染病と関係がありました。中国の歴史はまさに疫病との戦いだったのです。結局、一番の根っこは同じで、衛生観念が向上していないことにあるのです。今の中国ならばテクノロジーの力で感染病を押さえ込めるのではなどと持ち上げる人もいますが、その前の基礎的な取り組みのほうがよっぽど重要です。

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 マンションなどのハードウェアは先進国並になり、国中に高速鉄道が張り巡らされて人々は自由に移動できるようになった。しかしながら、衛生観念の面では人々の意識はまだ途上国というギャップがある。これこそが中国に繰り返し感染病危機をもたらしているのではないでしょうか。

1月23日に封鎖された後の武漢市のスーパーの様子 ©getty
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