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ルールは指導者が考えればいい

元永 僕は極論を言えば、ルールはなくてよいと思っています。それは指導者が考えればいいし、そのために指導者がいるわけですから。中村さんと同じで、一人で投げて勝ち続けるピッチャーなんて、日本中にほとんどいないですよ。どうしても連投していくと、どこかで負けていくから。それに、ピッチャーがどんなコンディションなのかは、チームの外にいる人間にはわからない。監督、指導者が見るしかないですよね。

中村 金足農業の指導者や選手たちにも当然、吉田君が一人で投げ続けたことについては聞いたんです。でも、議論にならなかったですね。「はっ?」て感じで。「そのために練習してるんじゃないですか」と。僕は、吉田君のお父さんは、さすがに心配していると思っていたのですが、じつに冷静な口調で「肩を壊すのは球数ではなく、フォームのよしあしにあると思っているので」と語っていて。吉田君のお父さんも金足農業OBで、元ピッチャーなんですけど、吉田君の連投に関して、誰よりも落ち着いた様子で話していましたね。ああ、じゃあ、もう外野は何もいえないと思いました。

 

元永 2018年の夏、済美の山口直哉君も地方大会からずっと一人で投げていて。そうしたら、甲子園の2回戦で星稜に勝った後のインタビューで、監督の中矢太さんはずっとそのことを聞かれていたんですよ。「180球以上投げていましたけど」って。でも、中矢監督はそのとき、「なんでそのことばかり聞かれるんだろう」って思っていたみたいです。白熱した試合で、延長してタイブレークになりという状況で、本人としては無我夢中ですよね。

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「投げさせすぎるとまわりから何を言われるかわからない」

中村 特に去年の夏の甲子園は大船渡の佐々木君の「事件」があった後なので、連投させようものなら、記者につるし上げられかねないみたいな雰囲気がありました。そういう意味では、球数制限を設けた方がいいと思うんです。監督を守る、という意味で。確かに、投げさせ過ぎだろと思うことはありますけど、それで監督を責めるのは違うと思うんですよ。「なんでですか?」って聞いても「勝つためです」って言うにきまってますし。その態度は監督として当然でしょう。勝つために試合をすることは参加する全チームのマナーだと思いますから。疑問があるのなら、ルールをつくっている大会サイドに言うべきですよね。

元永 最近は、「投げさせすぎるとまわりから何を言われるかわからない」という意識が、監督たちにはあるように感じますね。

中村 去年の夏、ある監督が、エースを温存した試合で、「大船渡のことは関係ないですよ。みんな、そう言わせたいんでしょうけど」って言ってましたね。でも、少なからず、影響はあったと思います。