なぜ直接支給が必要なのかというと、障害者が自分の介護、もっと言うと生活を自分の裁量でコーディネートできるようにするためなんですね。現状のように、相談支援事業が間に入ったり、細かい規則でがんじがらめにしたりして、使い勝手を制限するのは望ましくないかな、と。
――健常者と同様に、「自分の生活は自分で決める」ということですね。
木村 そうですね。今の制度を使うと、移動や家事、入浴と、生活を全部縦割りで切り刻まれてしまう。だから障害当事者からすれば、自分の好きな時間に買い物や入浴やリハビリをしたくてもできないということになっちゃうんですね。
最低限命を保つためのケアは保障されているかもしれないけど、「生活の質」は保障されていない。「社会参加」という言葉を謳いながら、現実的には社会参加を担うような制度にはなっていないんです。
――私も時々「もう少しのびのび生活したいな」と思います。
木村 旅行に行ったり、遠出をしたり、海外に行ったりなども、今の制度では厳密には許されてないのでね。健常者の人は海外に自由に行けるのに、「障害者は介護が必要だから行けないよ」というのは変じゃないですか。
――今の制度って、なぜこんなにも使いにくいのでしょう。
木村 健常者と同じように当たり前に生きていきたいだけなのに、人権が軽んじられているところがあるのかなと思っています。国会に入って、「当事者目線の障害者政策が全くと言っていいほど考えられてないな」と改めて感じましたし。介護をする方や法律を作る方、そして専門家は健常者が多いですから。やはり健常者目線の制度なんですよね。
――中央省庁にしても、障害者雇用数の水増しを行うくらいですから、政策に障害者の目線を入れようという発想自体を持ち合わせてなかったんでしょうね。そもそも介護報酬が低すぎるという指摘もあります。
木村 その問題についても取り組んでいきたいです。仕事の内容からすると、介護報酬はとても少ないと思います。重度訪問介護は、1時間1,800円ぐらいの介護報酬の中でやりくりしなくてはいけないので、社会保険などを入れると結構カツカツですから。
議会の外で最も時間を割いていること
――ところで、議会活動の外では何に最も時間を割いていますか。
木村 やっぱり介護者探しですね。
――それは、ご自身の介護者探しですか?
木村 私の介護者探しも、仲間の介護者探しも両方やります。
――大変驚きました。木村議員の名は日本中に知られていると思いますが、「それでも介護者は探さなければいけないのか」と。健常者は、そもそも介護者探しということ自体を知らないと思うんです。
木村 具体的に言えば、街頭に立ったり大学に行ったりしてボランティアをお願いするということですね。介護者が居なくてご飯が一食食べられないことなどは、よく聞く話です。私自身、重度訪問介護を1日24時間支給していただいてますけど、介護者がいなかったらそれも使えない。ですので、未だに時間を見つけては街に出ています。