昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/04/05

genre : ニュース, 国際

イギリスの「コロナ戦争」は“ダンケルクの再来”

 言葉だけではない。フランスは戒厳令を敷くため、兵士数千人を投入し、消毒薬の輸出を禁じた。イギリスも、すでに引退した医師や看護師に対し、国難に打ち勝つために復帰を要請した。ギリシャやイタリアが破綻に瀕しても財政出動を頑なに認めなかったドイツも、国債発行の禁を破り、90兆円の財政出動を決めた。

 特にこのイギリスの動きは、国家存亡の危機に立った第二次世界大戦を思い起こさせるのに十分だったに違いない。人々が想起したのは、ダンケルクの戦いだったはずだ。

 ジョンソン首相が理想と恃む当時のチャーチル首相はドイツ軍に攻め立てられ、フランスからの撤退を迫られた。そして、数十万人をドーバー海峡を渡らせ英国に引き揚げさせるという前代未聞の作戦に取り組んだ。その作戦を支えたのが、全国から召集した船だった。軍艦では全く足りなかったからだ。

 客船から小さな漁船まで、愛国精神に燃えた船乗りがダンケルクを目指し、銃弾も恐れずに兵士を救い、一部は命を落としながらも祖国の地まで運んだ。

自身も新型コロナに感染してしまったジョンソン首相 ©AFLO

奇異に映る「日本のキャバクラ営業中」

 撤退は本来後ろ向きの話だ。チャーチルも一時は引責辞任を覚悟したという。コロナとの闘いもそうだろう。勝ったところで、報償はない。無傷では終わらない。それでも、多くの命を救うことにはなる。引退した医師と看護師の復帰要請は、まさにこのダンケルクの再来なのだ。ジョンソン首相が新型コロナウイルスに感染したことも、政府が国民とともに戦うというイメージを作り上げる上ではプラスとなったとすらいえる。

 戦争状態の欧州に比すれば、日本の状況はまだ平穏に保たれているようにみえる。

 たしかに密閉、密集、密接の3密空間を避けたり、クラスター対策を徹底したりするなどの日本モデルで、日本は感染者数を抑制し続け、世界の注目も集めている。ただ、3密の条件を満たしそうなキャバクラなど夜の大人の社交場が営業を続けていることは、レストランすら閉めた欧州からすれば奇異にも映る。