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生後6カ月~1歳半の受容体の数で決まる「回避型」「安定型」「不安型」

 ストレスAとBのどちらを強く感じるかは、生後6カ月~1歳半までの間に決まる脳の機構が影響しているかもしれません。幸せホルモンとしてお馴染みのオキシトシンという物質は、脳で作用すると自分の近くにいる個体に愛着を感じるようになります。そのオキシトシンの受容体の脳内の密度が、この時期に決まるのです。

 精神科医・心理学者ボウルビィが満1歳児で実験したところ、

(1)母親と引き離しても泣かず、母親に再会しても母親に対して無関心な赤ちゃんがいました。このタイプは「回避型」といわれ、脳科学的にはオキシトシンの受容体の密度が低く、他者への関心が薄い。孤独を好む、ストレスBのほうを強く感じるタイプです。

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(2)母親と離されると泣き、再会するとホッとして母親に抱きつくのが「安定型」で、約60%の人がこのタイプです。

(3)母親と離されると激しく泣いて混乱し、再会してもなお激しく泣いて「どうしていなくなったんだ」と訴えるのは「不安型」で、ストレスAのほうを強く感じるタイプです。このタイプは常に誰かを必要とし、相手の愛を確かめようとしたり、裏切りを許さなかったりします。

(4)回避型と不安型を行ったり来たりする「混乱型」もあります。

 生後6カ月~1歳半の受容体の数で決まったタイプは生涯、90%は変わらないといわれますが、ということは10%は変えられるということです。実際、私は明らかに回避型で、独りでいる時間を必要とするタイプではありますが、もう少し人を信頼するようにしようと意識し、1人の信頼できる人(ダンナさんです)に出会えて、だんだんほかの人も信頼できるようになりました。

 樹木希林さんは組織に属さずに1人でお仕事をこなされて、ご家族とも、夫とさえも自分で納得できる距離をもって暮らし、言いたいことを言って、それで誰かが離れていけばいったで気にしなかったそうですね。カッコいい回避型だったのかもしれません。

続きは、「週刊文春WOMAN 2020春号」でお読みください。

なかののぶこ
1975年東京都生まれ。脳科学者。東日本国際大学特任教授。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。医学博士。2008年から10年まで、フランス国立研究所ニューロスピンに勤務。著書にベストセラーとなった『サイコパス』『不倫』(ともに文春新書)など。近刊に『空気を読む脳』(講談社+α新書)、『毒親』(ポプラ新書)など。

text:Atsuko Komine