1ページ目から読む
2/2ページ目

 資金の行方を捜査してきた東京地検特捜部は、夫の克行を選挙買収の中心と睨んできた。克行は案里が参院選へ立候補を表明した昨年3月以降、95人の広島県議や後援会関係者に2400万円の現金を渡して票の取りまとめを依頼し、当の案里も克行の指示で5人に150万円を配ったとされる。選挙買収に使われたこの2550万円プラスアルファの2600万円の原資が、1億5000万円の法外な“公認料”だと見ていい。それでもまだ、1億円近くの行方が謎である。

案里を担ぎ出したのは安倍か、菅か?

 夫妻の摘発は間違いないだろう。が、問題はそれを誰が出したのか。そこが政界における最大の関心事だ。周知のように元来、参院自民党の広島選挙区は溝手の出馬が決まっており、そこへ2人目の候補として河井案里を割り込ませた。そのための“公認料”である。

菅義偉官房長官 ©文藝春秋

「形の上では選挙資金なので党の二階俊博幹事長決裁になる。が、ポイントは安倍首相と菅官房長官のどちらが案里を担ぎ出したか、という点だ。安倍首相側は菅官房長官が子飼いの河井の妻を擁立したんだといい、逆に菅官房長官側は溝手嫌いの安倍首相が判断したんだと互いをけん制している」と自民党関係者は言う。

ADVERTISEMENT

 事件はもはや修復不可能といわれる官邸内の首相対官房長官の確執に飛び火しそうな雲行きだ。ここへ来て、「菅と案里の写った2ショットチラシに1億円かかった」なんて話まで飛び出しているが、仮に黒川が東京高検検事長としてそのまま居座っていればどうなっていたか、とも囁かれる注目の捜査。検察の威信をかけた東京地検特捜部はどこまで全貌を明らかにできるか。(敬称略)

◆◆◆

 森氏が指摘する河井夫妻の買収疑惑と黒川氏の定年延長問題だけでなく、新型コロナウイルスの感染拡大以来、安倍政権は大きな批判を浴び続け、支持率は過去最低を記録した。その背景にいるのは「官邸官僚」たちである。全戸一斉配布を謳った「アベノマスク」や安倍首相自らが出演した俳優・星野源とのコラボ動画問題などは、経産省出身の佐伯耕三秘書官のアイデアだとされる。なぜ官邸官僚たちは失策ばかりを続けるのか。

出典:「文藝春秋」7月号

「文藝春秋」7月号及び「文藝春秋 電子版」に掲載した森氏の論考「『官邸官僚』の自爆」では、アベノマスク配布や一人当たり10万円の特別定額給付金などコロナ対策を巡る官邸官僚たちの動きに加え、法案の見直しに追い込まれた検察庁法改正問題の深層についても詳述している。

※「文藝春秋」編集部は、ツイッターで記事の配信・情報発信を行っています。@gekkan_bunshun のフォローをお願いします。

文藝春秋

この記事の全文は「文藝春秋 電子版」で購読できます
「官邸官僚」の自爆